ラッセル英単語・熟語1500 |
「自由人の十戒」の第十戒
愚か者の楽園に暮らす人たちの幸せを羨ましがってはいけない。なぜなら,それを幸せだと考えるのは愚か者だけだからである。
A Liberal Decalog No.10
Do not feel envious of the happiness of those who live in a fool's paradise, for only a fool will think that it is happiness.
Source: Bertrand Russell: A Liberal Decalogue, 1951
More info.: https://russell-j.com/DECALOG.HTM
<寸言>
ラッセルがここで使っている「愚者の楽園( a fool's paradiise)」という言葉は、ローマ・カトリックの古い教義に由来しているそうです。(下記のサイトから注として引用しておきます。)
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1012997235
【注:カトリックでは天国と地獄との間に,苦しみを与えられることで軽微な罪を償って天国に入るための場所「煉獄」(れんごく)を設定しました。しかし,罪を犯す意志がなければ罪は存在しないなら,乳幼児と重度精神薄弱者は罪を犯すことがありません。彼らは煉獄に行くことはないのです。・・・でも,彼らは同時にカトリック信者でもなく善行者でもありません。彼らを天国に入れる者とするのは当時の神学上は難しかったのです。そこでカトリックでは乳幼児と重度精神薄弱者をそれぞれ特別の天国に入れる者としました。英語では前者をParadise of Infants,後者をParadise of Foolsと呼び,この後者が「愚者の楽園」です。】
もちろん、ラッセルが使っている「愚者の楽園」の意味は上記の意味ではないはずです。シェークスピアの Lomeo and Juliet で使われているセリフの一部を意識しているかも知れません。私としては、安倍氏や麻生氏などが住んでいる「愚か者の楽園」の意味で使いたいと思います。
(BBC Learning English「シェイクスピアと英熟語を学ぼう!愚者の楽園」
https://jp.voicetube.com/videos/160141
「愚者の楽園」というフレーズは欧米人(キリスト教徒)に人気があるらしく、以下のように、多くの人が使っています。どれが一番お気に入りでしょうか? 私としては、(ラッセルをとても尊敬していた)トインビーさんがお薦めです。
「愚者にとっての楽園は、賢者にとっては地獄なのである。」
トーマス・フラー『聖なる国家と俗なる国家』
「知的な地獄は、愚昧な楽園よりもましな場所だろう。」
ヴィクトル・ユーゴー
「創造的な人間が、ある事業を成就したのちにおちいりがちな受動的な錯誤は、昔大いに努力したから、"その後はずっとしあわせに暮らす"資格があると夢想して、愚者の楽園で"漕ぐ手を休める"ことである。
アーノルド・J・トインビー
#バートランド・ラッセル #Bertrand_Russell