バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

ラッセル英単語・熟語1500

当時の私の独善(自己中心的な感情及び考え方)は,今振り返って見ると嫌悪感を催させるが,彼女(ラッセルの妻アリス)を批判したことについてはかなりの根拠があった。・・・彼女は,私は子供には我慢できないので(子供が好きでないため),できるだけ子供達を私に近寄らせないようにと,ホワイトヘッド夫人に言っていた。同時に彼女は,私には,ホワイトヘッド夫人は自分の子供達の面倒をほとんど見ない悪い母親だと,言っていた。私が自転車に乗っている間,それらのことが山のように思い出され,そうして,それまでずっと彼女を聖人だと思ってきたが,実際はそうではないと気づいた。私の感情の激変で極端な方向に進み,実際彼女がもっていた多くの美徳さえ,忘れ去ってしまった。・・・。


Although my self-righteousness at that time seems to me in retrospect repulsive, there were substantial grounds for my criticisms. ... She told Mrs Whitehead that I couldn't bear children, and that the Whitehead children must be kept out of my way as much as possible. At the same time she told me that Mrs Whitehead was a bad mother because she saw so little of her children. During my bicycle ride a host of such things occurred to me, and I became aware that she was not the saint I had always supposed her to be. But in the revulsion I went too far, and forgot the great virtues that she did in fact possess.
Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.1 chap. 1
More info.: https://russell-j.com/beginner/AB16-070.HTM

<寸言>
 ほとんどの事柄について、人一倍、冷静に、客観的かつ論理的に考えることができる(できた)ラッセルも、やはり人の子でした。
 「ケンブリッジにおけるこの講義(2学期に渡る数理哲学に関する講義)が終了した頃(注:1901年10月1日~12月19日の Michaelmas Term + 1902年1月5日~3月25日のLent Term の2学期の間か?)・・・ その前のもの(1901年初めにあった、心臓病で苦しむホワイトヘッド夫人の苦悶を目撃して起こったラッセルの「改心」)よりもより重大な精神的打撃が私を襲った」と言っているのは、1902年春の出来事だと推察されます。
 ラッセルは嘘は大嫌いでした。妻アリスの嘘も相当ショックだったと思われます。アリスが、ホウィトヘッド夫人に「私(ラッセル)は子供が好きでないためできるだけ子供達を近寄らせないように」と(嘘を)言ったのは、子供を産めない体の自分からラッセルの心が離れていかないようにとの深謀遠慮だったと想像されます。「ホワイトヘッド夫人は自分の子供達の面倒をほとんど見ない悪い母親だ」とアリスがラッセルに言ったのも、ラッセルがホワイトヘッド夫人と仲がよいことに嫉妬していたからかも知れません。
 いずれにせよ、アリスの母親の辛辣な態度なども影響して、ラッセルの気持ちがアリスから急激に離れていってしまいました。以後、ラッセルの気持ちは元にもどりませんでした。
 もちろん、ラッセルも当時の独り善がりの感情や考え方を思い返すと嫌悪感に襲われると反省の弁を述べています。

 
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