ラッセル英単語・熟語1500 |
ベアトリスの父は彼女に自分の経歴をいろいろ語ったが,その影響で彼女が偉大な人物を過度に尊敬するようになることはまったくなかった。彼女の父は,クリミアにフランス軍の冬季用の仮兵舎を建てた後,その代金の支払いを受けるためにパリに行った。彼はほとんど全ての財産をその兵舎建設に費やしており,支払いをうけることは彼にとって重要な問題になっていた。しかしパリでは誰もが彼に対する債務を認めていたが,小切手はもらえなかった。とうとう彼は,同様の用向きでパリに来ていたブラッセイ卿に会った。ポッター氏が困難な状況についてブラッセイ卿に説明すると,ブラッセイ卿は笑いながら次のように言った。「ねえ君,君は仕事のこつを知らないんだね。大臣には50ポンド,それからその手下にはそれぞれ5ポンドずつやらなければならないんだよ。」 ポッター氏は言われる通りにした。すると翌日小切手が渡された。
Her (Beatrice's) father's stories of his career had not given her any undue respect for the great. After he had built huts for the winter quarters of the French armies in the Crimea, he went to Paris to get paid. He had spent almost all his capital in putting up the huts, and payment became important to him. But, although everybody in Paris admitted the debt, the cheque did not come. At last he met Lord Brassey who had come on a similar errand. When Mr Potter explained his difficulties, Lord Brassey laughed at him and said, 'My dear fellow, you don't know the ropes. You must give fifty pounds to the Minister and five pounds to each of his underlings.' Mr Potter did so, and the cheque came next day.
Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.1 chap. 1
More info.: https://russell-j.com/beginner/AB14-070.HTM
<寸言>
ブラッセイ卿(or ブラッシー卿)というのは、Thomas Brassey (1805-1870)のことを指していると思われます。トーマス・ブラッセイ(or トーマス・ブラッシー卿)は19世紀の土木工事請負業者であり、英国の鉄道ネットワークの6分の1とフランスの鉄道の半分以上を含む世界の鉄道の多くを建設したとのことです。 Lord (卿)は,爵位をもっていない貴族の息子にも呼称として使われますが,鉄道建設家の Thomas Brasseyは,貴族の息子ではなく,爵位ももっていなかったと思われます。同姓同名の息子 Thomas Brassey, 1836-1918は,1881年に1代限りの爵位を授けられ,1886年には初代ブラッセイ男爵,1911年には初代ブラッセイ伯爵となっています。 クリミア戦争は,1853~1856であることから考えると,ここに出てくるブラッセイは,父親の方であると考えるのが自然です。'Lord (卿)'の呼称をつけたのは,ラッセルの勘違いではないかと思われますが・・・?
なお、トーマス・ブラッセイについて詳しく知りたい方は下記を参照してください。
https://ja.celeb-true.com/thomas-brassey-civil-engineer-credited-have-built-most-railways
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