バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

ラッセル英単語・熟語1500
 <『拝啓ラッセル様』から>
 ・・・。同封した論文は発表(出版)予定のものです。・・・その論文の中に誤りがなく,先生の哲学の新しい評価を促すことになればと期待しています。・・・。

 ラッセル(93歳)からの返事(1965年10月30付)
 拝復 ミセス・イームズ様 
 お手紙ありがとうございます・・・また,私(の哲学)に関するあなたの論文もありがとうございます.今日,私のところに届きました。あなたの論文に感謝いたします。私が判断する限り,あなたが私の著作(哲学的研究)について言われていることは,正しいと思います。私自身、いつもこう思ってきました。「新しい科学研究の結果を受けて(結果に影響されて)哲学者が自分の考えを変えることに対して批判を行うということはいくらか馬鹿げたことである」と。このような批判が生ずるのは,何世紀にもわたって哲学が神学と結びつけられてきた結果だと思います。神学においては、人間は自分の考えを変えるよりは、むしろ進んで火刑に処せられるべきだと期待されます。しかし、哲学が,神学とではなく,より科学と関連を持つようになるにつれ,哲学者の意見はある程度の柔軟性を持つべきであり・・・。


'... The enclosed paper [is to] be published. ... I hope it contains no errors, and that it promotes a new evaluation of your philosophy, ...'

Dear Mrs Eames, (October 30, 1965)
Thank you for your letter ... and for your article about me, both of which reached me today. I am grateful for your article and, as far as I can judge, the things you say about my work are just. I have always felt, myself, that there is a certain absurdity in criticizing a philosopher for changing his mind as a result of new scientific work. I think this comes of the many centuries of association of phiosophy witrh theology, In theology, it is exepcted that a man should be willing to be burnt at the stake rather than change his mind. But as philosophy becomes more associated with science than with theology, a philsopher's opinions should have a certain flexibility. ...
Yours sincerely
Bertrand Russell
 Source: Dear Bertrand Russell, 1969
 More info.:https://russell-j.com/beginner/DBR4-07.HTM

<寸言>
 ラッセルは諸科学の成果(新たな発展や発見)を参考にして、自分の過去の意見が間違っていると思うようになれば、躊躇しないで自分の考えを変え、公表します。そうして、過去の著作は、多くの場合、「歴史的ドキュメン」として残し、無理につじつま合わせの修正は行いません。少しの修正で済み、改訂版を出したほうがよいと判断すれば改訂版をだすことはありますが、多数の修正が必要な場合は、過去の著作は当時の自分の考えだとして残し、新しい著作を発表します。これに対し、少なからぬ哲学者は、自分が過去に主張したことが不適切だと感じられるようになっても、批判されると、自分はそのように言おうとしたのではないと弁解に努め、間違いを認めません。(また、ラッセルが考えを変えてすでに新しい著作を発表しているのに、それを参照せずに、ラッセルの過去の著作のみを批判する研究者や評論家はこっけいです。)

 ところで、この手紙を出した Mrs. Eames というのは Elizabeth Ramsden Eames(1921-2019) のことで,該当する論文はThe consistency of Russell's realism, by Elizabeth R. Eames. In: Philosophy and Phenomenological Research, v.27: June 1967, p.502-511 と思われます。
 イームズ教授(哲学博士)は、 1969年に Bertrand Russell’s Theory of Knowledge を、1989年に Bertrand Russell’s Dialogue with His Contemporaries を出版しています。また、ケネス・ブラックウェル博士との共同編集のもと、The Collected Papers of Bertrand Russell, Volume 7: Theory of Knowledge, the 1913 Manuscript を1984年に出版しています。イームズ教授は、Bertrand Russell Society の名誉会員(私も長年の間、"名ばかりの"会員です)でしたが、2019年に亡くなりました。詳しくは、次のサイトの説明をお読みください。
https://bertrandrussellsociety.org/2019/10/16/elizabeth-ramsden-eames-1921-2019/

 
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