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「米国において国防のために費やされるお金は、たいへんな額に上ります。大軍需企業は議会工作のために退役軍人を雇い入れ、非常に強力な議会工作(ロビー活動)や効率的な宣伝活動を行います。これは、軍縮のための大きな妨げとなります。・・・」
ラッセルからの返事(1962年5月13日)
拝復
あなたからのとても興味深いお手紙、うれしく拝読しました。わたしは、米国における国防費と防衛の役割との間の関係を暴露したために、多大の苦難を味わわされたことを指摘しなければなりません。わたしは、産軍複合体を非難してきました。そうして最近のいくつかの論文で、産軍複合体の難しい問題に専念してきました。
わたしが最近書いた若干の文献を同封します。その中に「原子科学者会報」に寄稿した論文も入っています。その論文では、アメリカのペンタゴン(米国国防総省)と、それからそれと結託している実業家たちの危険性について、その概略を述べてあります。
’There is an immense amount of money tied up in "defence" contracts in the States. The largest firms hire retired army men to lobby for them, and run very powerful lobbies in the U. S. senate, and put out very efficient propaganda ..."’
Dear Mr. Davie, (May 13, 1962)
Your letter to me is a most fascinating one, but I should point out to you that I have taken great pains to show the connection between the expenditure on defence and the role of defence in the United States. I have decried the military-industrial complex and in several recent articles have concentrated on this difficulty.
I am enclosing for your interest some recent literature of mine including an article for the Bulletin of Atomic Scientists in which I outlined the danger from America's Pentagon and the business men who are in league with it.
Source: Dear Bertrand Russell, 1969.
More info.: https://russell-j.com/beginner/DBR5-16.HTM
<寸言>
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所によると、昨年(2020年)の軍事費は、「一部財源が新型コロナウイルス対策に振り向けられたにもかかわらず、2.6%増加し1兆9800億ドルに達した」とのことです。総額約2兆ドル(日本円で約214兆円)のうち、米国が約78兆円、中国が推定で約27兆円とのことです。
https://www.nippon.com/ja/japan-data/h01019/
資本主義国も共産主義国も、お互いに自国を他国からの侵略から守るために膨大な軍事費を支出しているわけですが、壮大な浪費と言わざるをえません。
世界「連邦」政府を創設し、世界連邦が主要兵器を独占し、各国から交戦権を剥奪し、軍事費相当の200兆円を世界連邦政府の財源にできたら、人類にとってどれだけよいことでしょうか?
「そんなのは夢物語だ」と言う人が多いでしょうが、「米中ソ+それぞれの同盟国」が相手に優越する軍備を整備し続けて東西の軍事バランスをとることによってのみ平和を保つことができると考えるほうが「非現実的」だと思いますが、どうでしょうか?
いずれ、核超大国保有の核兵器がテロリストによって奪われて使用されてしまうなんてことがおこるかも知れません。多分、人類は、特に超大国は、痛い目に合うまで、自ら交戦権を捨てることはなさそうです?
#バートランド・ラッセル #Bertrand_Russell