バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )


<『拝啓ラッセル様ー一般市民との往復書簡』から> (2021.06.26 土)

「・・・日本政府は・・・文部大臣及び学長の学部や個々の教員に対する権限を強化し、マルクス主義を排除しようとしています。我が国の大学教員及び学生のほとんどはこの法案(訳注:各国立大学に学外者9名,教授代表3名および学長からなる管理委員会を組織し,これに学長,学部長,教職員の任免権をはじめ,財政運用等にかかわる一切の権限を与えようとする「大学管理法案」)に反対しています。・・・」 。


 ラッセルからの返事(1963年1月16日付)
 拝復 岩松(繁俊)博士
 ・・・大学でマルクス主義を教えることや論じることを非合法化し、学部や個々の教員に対する政治的統制を拡張する日本政府の法案のことを知り、嫌悪感を抱いています。・・・さらに事態が進展したらお知らせください。そうして、もしあなたが示唆されているように、あなたご自身に対して何らかの報復がなされるようでしたら、私はこの問題を我が国を始め他の国々でも公にとりあげますのでご安心ください。・・・。
 幸運をお祈りします。
  敬具
  バートランド・ラッセル。


'The government ... intends to strengthen the power of the Minister of Education and the presidents of universities over faculties and individual teachers, and to exclude Marxism. Most of our university teachers and students oppose the bill. ...

Dear Dr Iwamatsu, (Jan. 16, 1963)
... I am disgusted to learn of the Government's bill outlawing the teaching and discussion of Marxism in universities and extending political control over faculties and individual teachers.... Do inform me of further developments and if there is any reprisal against you, as you indicate, be assured that I shall raise the matter publicly in this country and elsewhere.
With good wishes.
Yours sincerely
Bertrand Russell
 Source: Dear Bertrand Russell, 1969
 More info.: https://russell-j.com/beginner/DBR5-18.HTM

<寸言>
 今では学生がデモをすることはほとんどなく、JRなどの交通機関がストライキをして電車をとめるなどということは、余り想像できません。
 しかし、1960年代、特に1960年代後半から(東大安田講堂事件を経て)、1970年の日米安保条約改訂時までは、学生デモは日常茶飯事であり、JRの前身である国鉄なども「ジェネラル・ストライキ」を行い、交通機関が全面的にストップするようなこともありました。
 国・政府による国立大学の管理運営の強化の動きはそれ以来ずっと続いていますが、ゆるやかになってきていると言ってよいのではないでしょうか?(学術会議を政府の意向にそうように変えようという動きが最近ありましたが、過激思想を持った教員を取り締まると公言する政治家はほとんどいません。)

 この手紙に出てくる国立大学の管理運営に関わる法案(各国立大学に学外者9名,教授代表3名および学長からなる管理委員会を組織し,これに学長,学部長,教職員の任免権をはじめ,財政運用等にかかわる一切の権限を与えようとする「大学管理法案」)は、国立大学の運営管理に関する法案なので、個々の教員の思想統制を直接めざしたものではないですが、政府や文部省(現在の文科省)に従順な学長が「上から」選ばれるようになれば、教員の任免や昇進・降格が恣意的に行われる危険性もでてきます。政府や文部省が疎ましく思う「過激」思想の持ち主を冷遇することは十分考えられることであり、当時の反権力的な教員が法案の国会上程に危機感を覚えたであろうことは、理解できるのではないでしょうか?
 ラッセルは反共産主義者としてよく知られていますが、同時に思想・信条の自由を最重要視しています。そのことを理解しないで、ラッセルを容共主義者だと非難する人が少なくないのは残念です。(なお、岩松繁俊長崎大学名誉教授は昨年9月に92歳で亡くなられました。岩松教授は被爆者であり、原水爆禁止国民会議の議長を10年間務められました。お会いしたのは一度だけですが、年賀状の交換だけは長年していました。)

 
ラッセル関係電子書籍一覧

楽天アフィリエイトの成果(ポイント)は本ホームページのメンテナンス費用にあてさせていただきます。ご協力よろしくお願いいたします!