バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )


 (私の90歳の誕生日の)翌日(1962.5.19)の午後,(ロンドンの)ロイヤル・フェスティヴァル・ホール で ー支配人 T.E.ビーンの思いやりのある後援のもとー 祝賀パーテイが催されたが,それについて何をどういったらよいかわからない。私のために記念コンサートが催され,いろいろなプレゼンテーションがあるということは聞かされていたが,コンサートがあれほど素晴らしいものになろうとは事前に知ることはできなかった。コリン・デイヴィス指揮のオーケストラの演奏も,リリー・クラウスの(ピアノ)独奏も,とても素晴らしいものであった。また,私に対し贈られた数々のスピーチがあれほど感動的かつ寛大なものになるとは予期できなかった。・・・。

Of the celebration party (for Russell) at Festival Hall, under the kind aegis of its manager, T. E. Bean, that took place the next afternoon, I do not know what to say or how to say it. I had been told that there would be music and presentations to me, but I could not know beforehand how lovely the music would be, either the orchestral part under Colin Davis or the solo work by Lili Kraus. Nor could I know how touching and generous would be the presentation speeches.
 Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.3 chap. 3
 More info.: https://russell-j.com/beginner/AB33-350.HTM

<寸言>
 このラッセル生誕90周年祝賀コンサートは、ストラヴィンスキー(20世紀を代表する作曲家の一人)がこの日のために作曲した「誕生日を祝う小品」で開始されています。この祝賀コンサートには、ネール首相、シュバイツァー、ミッシャ・エルマン(Mischa Elman 名ヴァイオリニスト)、その他、各国の著名人からお祝いの言葉が多数寄せられており、ラッセルの交友の範囲の広さや影響力の強さが伺われます。
 ラッセルは記念コンサートの最後に次のようにお礼の言葉を述べています。

 「友人の皆さん! 今ここで何と申し上げたらいいか,ほとんど思い浮かびません。感動で何も言えません。また,その感動は深いものであり,何か表現したいという気持ちよりも勝っています。私は,この祝賀会を開催するために尽力された方々に心から感謝の念を捧げなければなりません。喜びに満ちた,非常に美しい音楽を絶妙に演奏してくださった演奏家の皆さん,私の友人シェーンマン氏のように目だたないところで働いてくださった方々,それから私に贈物を下さった全ての方々に対し,心から感謝を捧げます。贈物はそれ自体高価なものでありますとともに,この危険な世界に対する不滅の希望を表わしています。
 私は非常に単純な信条の持ち主です。それは何かといいますと,生命と喜びと美は,ほこりっぽい死よりもずっとよいものだということです。また,本日ここで私たちが聴いたような音楽に耳をかたむけている時,そのような音楽を作曲し演奏できるということ,そしてまたそのような音楽を聴くことができるということは,守り続ける価値があると感じなければならないとともに,愚かな'言い争い'で放り出すべきではないと考えます。単純な信条だと言われるかもしれませんが,すべて大切なことは実にしごく単純なものであると,私は考えます。私は,その信条は十分なものであるということを発見しました。そして,本日ご出席の非常に多くの方々もまた,その信条は十分なものであると悟っておられると思います。もしそう考えておられないのであれば,今日ここにおいでになられなかっただろうと思います。
 しかし,程度はいろいろですが,私が迫害や汚名や罵りを招く道筋(コース)をこれまで通ってきたことを考える時,それに代わって,今日のように歓迎されるということはどんなに困難なことであるか(夢のようであるか)ということだけ,今申し上げたいと思います。私は今かなり'つつましやかな気持ち'になっています。このような機会を与えてくださった皆さんのお気持に恥じない生き方をするよう努力しなければならないと思っています。今後そうしたいと思います。心の底から皆さんに感謝申し上げます。」

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