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私の最初の短篇小説集は,『郊外町の悪魔』であった。この短篇小説集の書名となった小説(Satan in the Suburbs)は,部分的には,私が Mortlake(ロンドン郊外の Richmond)で出合ったある見知らぬ男から示唆されたものであった。彼は私を見ると,道路を横切り,そうして,去っていく時に十字架のサインを切った。また部分的には,私が散歩する時にしばしば出合ったかわいそうな精神病をわずらったある婦人からも示唆を受けている。この小説には,ある邪悪な科学者が登場する。彼は,人々が犯した1度の背徳行為から,巧妙な方法で,彼らを取り返しのできない破滅に追い込んでいった。写真を恐喝に利用している写真家もそうして破滅に追いやられた一人であった。私は,かつて私の写真を撮りに来たことのある流行写真家を彼のモデルにした。その写真家は間もなく死んだが,その後,私がその短篇小説の中で告発したようなあらゆる罪を犯していたことを知った。
My first book of stories was Satan in the Suburbs. The title story was in part suggested to me by a stranger whom I met in Mortlake and who, when he saw me, crossed the road and made the sign of the Cross as he went. It was partly, also, suggested by a poor mad lady who I used to meet on my walks. In this story there was a wicked scientist who by subtle means caused people, after one lapse from virtue, to plunge into irretrievable ruin. One of these people was a photographer who made photography an opportunity for blackmail. I modelled him upon a fashionable photographer who had come to make a picture of me. He died shortly afterwards, and I then learnt that he practised all the sins of which I had accused him in the story.
Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.3
More info.: https://russell-j.com/beginner/AB31-280.HTM
<寸言>
本書の日本語訳が1954年に中央公論社からでており私も所蔵していますが、現在では、古書としても入手困難となっています(「短編」ではなく「短篇」という表記です)。
収録されている作品のタイトルは以下のとおりです。なお原著・邦訳とも、各作品の最初に Asgeir Scott 作の魅力的なイラストがつけられています。
・郊外(町)の悪魔
・コルシカにおけるX嬢の試練
・赤外線透視機
・パルナッソス(山)の守護者
・聖職者であることの利便性
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#バートランド・ラッセル #Bertrand_Russell