種々の名誉と,私の著作『西洋哲学史』の販売とともに始まった収入の増加が,自分の全精力を自分がやりたいことに費せる自由や保証があるという感覚を与えてくれた。私は厖大な量の仕事をなしとげた。その結果,楽天主義的になるとともに人生に対する熱意を感じた。私はそれまで,人類に脅威を与えている・より暗い可能性を強調しすぎてきたのではないか,また,当時議論が行われていた諸問題のなかで(解決策を見つけることのできそうな)より幸運な問題について安心感をもたらすような著書を書く時期ではないか,と考えた。私はその著書に『変わりゆく世界への新しい希望』(New Hopes for a Changing World/理想社刊の邦訳書名:『原子時代に住みて-変わりゆく世界への新しい希望』)という書名をつけ,そうして,両方の可能性がある場合には,意図的に(故意に),より幸運な方を実現することが可能であると強調した。
Honours and increased income which began with the sales of my Histry of Western Philosophy gave me a feeling of freedom and assurance that let me expend all my energies upon what I wanted to do. I got through an immense amount of work and felt, in consequence, optimistic and full of zest. I suspected that I had too much emphasised, hitherto, the darker possibilities threatening mankind and that it was time to write a book in which the happier issues of current disputes were brought into relief. I called this book New Hopes for a Changing World and deliberately, wherever there were two possibilities, I emphasised that it might be the happier one which would be realised.
Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.3
More info.: https://russell-j.com/beginner/AB31-240.HTM
<寸言>
皮肉屋かつ懐疑家で通っていたラッセルではあったが。たまには悲観的なことや皮肉はあまり書かずに、人々に希望を持たせるような、前向きな考えを持つことを可能にするような本を書いてみようと思ったのであろう。
世界的に著名となり、数え切れない栄誉を受け、世界中にファンを持ち、さらに収入が恒常的に多く入るようになれば、(健康であれば)誰だって幸福感を感じることができるであろう。通常は、世間の評判(社会的評価)、収入、健康、家族などの、幸福になるために必要な要素のどれかひとつは欠けている。
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