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私の『西洋哲学史』がほぼ完成した。そこで,アメリカにおける私の著書の出版者である W・W・ノートンに手紙を書いて,私の困難な家計状況を考慮して,『西洋哲学史』(の印税=原稿料)の'前払い'をしてくれるかどうかを尋ねた。ノートンは,ジョーンとケイトに対する愛情から,また旧友に対する好意として,500ドルを前払いしよう,という返事がきた。私は,他ならもっと支払ってもらえるだろうと考え,個人的には未知の間柄であったが,サイモン・アンド・シュスター(訳注:Simon and Schuster 社の社主=兄弟)に働きかけてみた。彼らはただちに即金で2,000ドル,半年後にさらに1,000ドルを支払うことに同意してくれた。当時,ジョンはハーバード大学に,ケイトはラドクリフ女子大学に在学中だった。資金不足から,やむなく二人を退学させなければならないかもしれないと心配していたが,サイモン・アンド・シュスターのおかげでその必要はなくなった。
My History of Western Philosophy was nearly complete, and I wrote to W. W. Norton, who had been my American publisher, to ask if, in view of my difficult financial position, he would make an advance on it. He replied that because of his affection for John and Kate, and as a kindness to an old friend, he would advance five hundred dollars. I thought I could get more elsewhere, so I approached Simon and Schuster, who were unknown to me personally. They at once agreed to pay me two thousand dollars on the spot, and another thousand six months later. At this time John was at Harvard and Kate was at Radcliffe. I had been afraid that lack of funds might compel me to take them away, but thanks to Simon and Schuster, this proved unnecessary.
Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.2
More info.: https://russell-j.com/beginner/AB26-070.HTM
<寸言>
ラッセルの専門的な著書はそれほど売れているとは言えませんが、一般向けの著書は(特に英語圏においては)売れているものがかなりあります。その中では、『幸福論』が一番売れており、続いて『哲学の諸問題(通称、哲学入門)』が売れており、その次くらいに、『西洋哲学史』が売れています(日本においても、今でも、市井三郎氏の名訳で、みすず書房から出版されています)。
『西洋哲学史』は、バーンズ財団主催の市民講座で行われた連続講義をもとにしたものであり、生活費や子どもの学費を稼ぐためであったという事実は、興味深いものがあります。
また、ラッセルへのノーベル文学賞(1950年度)授与は、ラッセルの専門的な著書に対するものではなく、一般向けの著作に対してであることも同様に興味深く思われます。
なお、第二次世界大戦中、ラッセルは米国に滞在していたため、『西洋哲学史』は1945年に米国でまず出版されており、英国での出版は翌年の1946年となっています。米国の著作権法では、著作権の保護期間は、「没年が1978年以前の個人著作物は旧法の規定でパブリックドメイン化していない場合は死後70年」(ウィキペディア)ですので、(ラッセルの没年は1970年ということから)問題がありそうですが、下記に A History of Western Philosophy, 1945 のフルテキスト(PDF)がアップロードされています。そのうち、ダウンロードできなくなるかも知れないですが・・・?
http://www.ntslibrary.com/PDF%20Books/History%20of%20Western%20Philosophy.pdf
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