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新しい知識は進歩の主な要因であり,新しい知識がなければ,世界はすぐに停滞してしまうだろう。一時的には,既存の知識を普及させ,より広く利用することによって,世界は改善し続けるかもしれない。しかし,その過程はそれだけでは長続きしない。また,知識の探求ですら,もし功利主義的なものであれば,自立できない。(注:「直接的な」利益を生むと思われるものしか研究しないために自律的なものでなくなる。)功利主義的な知識も,私心のない探求(研究),すなわち,世界をよりよく理解しようという願望以外の動機を持たない探求によって,実りあるものにする必要がある。
New knowledge is the chief cause of progress, and without it the world would soon become stationary. It could continue, for a time, to improve by the diffusion and wider use of existing knowledge, but this process, by itself, could not last long. And even the pursuit of knowledge, if it is utilitarian, is not self-sustaining. Utilitarian knowledge needs to be fructified by disinterested investigation, which has no motive beyond the desire to understand the world better.
Source: On Education, especially in early childhood, 1926, by Bertrand Russell
More info.:https://russell-j.com/beginner/OE18-080.HTM
<寸言>
新しい知識といっても、ほんのささいな発見からたとえば相対性理論の発見のような偉大なものまで、その重要さはピンからキリまで、幅広いものがあります。後者のような人類に大きな気付きや視野の拡大をもたらす「新しい知識」や「新しい発見」は、天才の力によるものが少なくないですが、短期的な成果を求める社会的圧力のもとではなかなか困難です。
日本の国力は、GDPで言うと2000年には世界の約16%をしめていましたが、2019年には約6%くらいと、急激に低下しています。アベノミクスによって戦後2番目の長期の経済成長を続けたと安倍総理(当時)は自慢し続けてきました。しかし、米国も相対的に地位が低下してきたとは言えそれほど落ち込んではおらず、日本の地位の低下ぶりは際立っています。政治家や社会が、短期的な成果ばかりを求めてきた結果であり、わずかな経済成長の恩恵も大企業や富裕層にだけ恩恵が届き、格差だけが進んだとしたら、歴代政府の責任は大きいと言わざるをえません。いや、それは日本人の生産性が低いからであり、政府の責任ではないという説明で納得する人は、政府に対しとても「寛容な」人だと言えそうです。
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