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<1920年、ロシアにて>
... 彼女(Mrs Harrison)はアメリカのスパイであり,英国にも雇われていた(いわゆる二重スパイ)。ロシア人たちは,彼女がスパイであることを見抜いた。そうして,彼女が今度はロシアのためのスパイになることを条件としてその生命を助けた。けれども彼女はロシアのために働くことをさぼり,ロシアと親しい者を密告し,ロシアの敵を逃がしてやったりした。・・・それにもかかわらず,彼女はとてもチャーミングな女性であった。そうしてアレン(Clifford Allen、1889-1939)が病気の中,アレンの古くからの友人たちよりも,はるかに優れた技量を発揮し,より以上に献身的に彼を看病した。あとで,彼女がスパイであるという事実が明るみに出た時,アレンはたとえ一言でも,彼女を悪く言う言葉を断固として拒んだ。
[ 1920, in Russia ]
I felt sorry for the poor lady, but my sorrow was misplaced. She was an American spy, employed also by the British. The Russians discovered that she was a spy, and spared her life on condition that she became a spy for them. But she sabotaged her work for them, denouncing their friends and letting their enemies go free. ... Nevertheless, she was a charming woman, and nursed Allen during his illness with more skill and devotion than was shown by his old friends. When the facts about her subsequently came to light, Allen steadfastly refused to hear a word against her.
Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.2
More info.:https://russell-j.com/beginner/AB22-210.HTM
<寸言>
女スパイだったという Mrs Harrison というのはどんな人物だったのか、Google で「a double agent Mrs Harrison」で検索したところ、下記に詳細な情報(写真付き)がありました。
https://www.baltimoresun.com/opinion/op-ed/bs-ed-op-0520-marguerite-harrison-20180517-story.html
Marguerite E. Harrison は、アメリカ最初のCIA(の前身の米国軍事情報部)の女性スパイ(兼、ボルティモア・サンの記者)で、共産主義の脅威の高まりを監視するために、1918年12月にドイツに派遣されたとのことです。ロシア語を含め、5ヶ国語を流暢に話すことができたそうです。
米国の諜報機関の責任者は当初、女性は恋愛によって簡単に敵の術中にはまってしまうという理由で女性をスパイとして送り込むことに消極的だったとのことですが、それは先入観で、男性の方が絶世の美女の軍門に下り易いかもしれません。。
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