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独裁制が存在しているところでは、若者はまだ自分で考えられるようになる前に、ひとそろいの信念が精神に注入され、また、これらの信念は生徒たちが後に(成人した後に)早期の授業(教訓)の催眠効果から決して逃れることができないであろうことが期待されるように,絶えず執拗に教えられるのである。こうした信念は、その信念が真実だと想えるような理由を与えることによってではなく、オウムのような繰返しや集団ヒステリーや集団的な暗示によって注入されるのである。
Wherever there is autocracy, a set of beliefs is instilled into the minds of the young before they are capable of thinking, and these beliefs are taught so constantly and so persistently that it is hoped the pupils will never afterwards be able to escape from the hypnotic effect of their early lessons. The beliefs are instilled, not by giving any reason for supposing them true, but by parrot-like repetition, by mass hysteria and mass suggestion.
Source: Power, a new social analysis, 1938, by Bertrand Russell
More info.:https://russell-j.com/beginner/POWER18_320.HTM
<寸言>
個人個人を活かすための教育というより、国家や社会のために「役立つ」「人づくり」(かつて日本で唱えられた「理想的な人間像」など)が強調されるようになると、教育は歪められる。現代は情報があふれており、年齢が低い児童は何が正しくて何が正しくないか、事実を確かめてから自分の意見を形成する能力は未発達な状態にある。
保守的な考え方を抱く権力者は、国家や現在の体制に従順な人づくりをするために、批判的な思考力を子供が身につけるまえに、「愛国心」や「偉い人たちを尊敬する態度」を身に着けさせたいと考える。
彼らも科学を重視する。しかし、科学の領域における科学的なものの見方は重視しても、社会や人間に対する科学的なものの見方はそれほど重視しない。政治家は、都合の悪い事柄については説明をあまりせずに、「国民のために」「国民の命を守る」「遡及的にすみやかに」「スピード感を持って」などといったおまじない言葉を繰り返し、国民の心にそういった言葉を浸透させていく。国民もパブロフの犬のように、ある刺激を加えれば、ある特定の言葉をつられて言うようになったら、論理的な説得によらず、国民の調教は成功する。
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