私は5歳の時,幼年時代は人生で一番幸福な時期だ,と言われたのを覚えている。・・・私は,慰めようもないくらい泣き,死んでしまいたいと思い,また,これからの年月,どのようにして退屈に耐えるべきだろうかと思案した。今日では,子供に向かってそんなことを言う人がいるとはほとんど想像できない。子供の人生は,本能的に前向きである。つまり,つねに,将来可能になるだろうことに向かっている。このことは,子供の努力に対する刺激の一部である。子供の心を後向きにすること,未来を過去よりも悪いものとして示すことは,子供の人生を根元から害するものである。
I can remember, at the age of five, being told that childhood was the happiest period of life. I wept inconsolably, wished I were dead, and wondered how I should endure the boredom of the years to come. It is almost inconceivable, nowadays, that anyone should say such a thing to a child. The child's life is instinctively prospective : it is always directed towards the things that will become possible later on. This is part of the stimulus to the child's efforts. To make the child retrospective, to represent the future as worse than the past, is to sap the life of the child at its source.
Source: On Education, especially in early childhood, 1926, by Bertrand Russell
More info.: https://russell-j.com/beginner/OE04-140.HTM
<寸言>
「親の心子知らず」の反対「子の心親知らず(歯ではない!)」。
しかし、大人は「幼年時代は人生で一番幸福な時期だ」と思っている人が多そうだが、子供は「早く大人になりたい」あるいは「早く大人のようにいろいろできるようになりたい」と思う子供のほうが多いであろう。親子の思いは微妙にずれている。
ラッセル関係電子書籍一覧
#バートランド・ラッセル / #Bertrand_Russell