バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

『バートランド・ラッセル−反核の論理学者』(学芸みらい社刊)p.61で言及されているラッセルの言葉です。

この日とそれに続く何日間,驚いたことに,一般の(平均的な)男女が,戦争が起こりそうことを喜んでいるのを発見した。私は、妄信的に(愚かにも),ほとんどの平和主義者が主張するように,戦争は,専制的かつ権謀術数に長けた政府によって,嫌がる(気の進まない)民衆に押しつけられるものである,と想像していた。エドワード・グレイ卿は,戦争が起こったら,我々英国民にフランスを支援させるべく,ひそかに手を打っており,そのことを一般国民に知られないようにするため,用意周到に嘘をついてきたことを,私は,戦争が起こる何年も前から気がついていた。グレイ卿がいかに国民をだましてきたか,国民が知ったら,さぞかし立腹するだろうと,素朴に想像していた。しかし怒るかわりに,国民は自分たちにも倫理的責任の一端を担わせてくれたグレイ卿に,感謝したのである(注:言うまでもなく,皮肉です。)

During this and the following days I discovered to my amazement that average men and women were delighted at the prospect of war. I had fondly imagined, what most pacifists contended, that wars were forced upon a reluctant population by despotic and Machiavellian governments. I had noticed during previous years how carefully Sir Edward Grey lied in order to prevent the public from knowing the methods by which he was committing us to the support of France in the event of war. I naively imagined that when the public discovered how he had lied to them, they would be annoyed; instead of which, they were grateful to him for having spared them the moral responsibility.
 Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.2, 1968, chapt.1: The First World War.
More info.: https://russell-j.com/beginner/AB21-020.HTM

<寸言>
 戦争の実態は現在では戦場にいかなくても、多数の記録(実際に戦場で撮影したものも含む)によって後世の我々も知ることができるようになっている。しかし、そういったことに関心をもたなかったり、いやなことは知りたくない人間は、戦争の原因になりそうな政策を政府がやってもあまり気にしない。そういった国民でも戦争の実態を知るようになるのは、戦争によって同胞がの多くが傷つき、自分あるいは身近な人達が徴兵される可能性がでてきた時であろう。しかし、そのような状態になってしまった段階では戦争を止めることが困難になっている。

   

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