家族の衰退をもたらした原因は,一部分は経済的なものであり,一部分は文化的なものであった。最高度に発達した家族というものは,都市住民にとっても,船乗り(seafaring people)にとっても,決してあまり適したものではなかった。商業は,現代を除く(except ours)あらゆる時代において,文化を生み出す主な要因であった。商業は,人々を自分たちのものとは異なる慣習と接触させ,そうして,部族の偏見から人々を解放したからである。従って,船乗りである古代ギリシア人(注:ギリシア時代のギリシア人)の間には,同時代の他の人々よりも,はるかに家族への隷属が見られない。海の持つ解放的な影響力の例は,他に,べネチア,オランダ,エリザベス朝のイギリスにも見られる。
The causes which brought about the decay of the family were partly economic and partly cultural. In its fullest development, it was never very suitable either to urban populations or to seafaring people. Commerce has been in all ages except ours the chief cause of culture, since it has brought men into relations with customs other than their own, and has thus emancipated them from tribal prejudice. Accordingly we find, among seafaring Greeks, much less slavery to the family than among their contemporaries. Other examples of the emancipating influence of the sea are to be found in Venice, in Holland, and in Elizabethan England.
情報源: Bertrand Russell :Marriage and Morals, 1929
詳細情報:https://russell-j.com/beginner/MM13-060.HTM
<寸言>
商業・商売は開明的な面(性格)があるとともに、利益のためには悪に走るという面(性格)もある。死の商人という言葉があるように、同盟国だけでなく敵国に武器を撃ったりして儲ける者も現れたりする。