バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

 同様に,視覚の,物理学に対する脈絡(文脈)は,物理的であり,それ(その文脈)は脳の外にある。後戻りすれば,それはあなたを(物理的な)眼のところへつれてゆき,次に光子のところへつれてゆき,次にいくらか遠いところにある対象における量子遷移へと連れてゆく。視覚の,心理学に対する脈絡(文脈)は全く異なっている。たとえば,視覚があなたが破産したことを告げる電報の視覚(電報をあなたが見ること)であるとしてみよう。多くの事象があなたの心の中で心理学的因果法則に従って起るだろう。そうして,あなたが頭の毛をかきむしったり,大声をだして泣き叫ぶような純粋に物理的結果がおこる前に,長い時間が経過するであろう。

In like manner the context of a visual sensation for physics is physical, and outside the brain. Going backward, it takes you to the eye, and thence to a photon and thence to a quantum transition in some distant object. The context of the visual sensation for psychology is quite different. Suppose, for example, the visual sensation is that of a telegram saying that you are ruined. A number of events will take place in your mind in accordance with the laws of psychological causation, and it may be quite a long time before there is any purely physical effect, such as tearing your hair, or exclaiming "Woe is me!"
 出典: Bertrand Russell : Mind and Matter (1950?)
 詳細情報:https://russell-j.com/beginner/19501110_Mind-Matter150.HTM

 <寸言>
 外界から刺激を受けてその情報を脳で処理する時の微細な電流(パルス)の流れや(脳細胞間での)メッセージ物質の発射・受取の様子を電子顕微鏡やMRIなどで見ると、ラッセルの言うことが実感できるのではないか?
 NHKの人体シリーズの「脳」を見た方は同意見だろうと思われるが、問題はそれでは終わらない。自然科学は客観的だと言っても、つきつめれば、そういった(正確だとされる)情報やデータも、間違いやすい個々人が処理したものだということをよく考える必要がある。