名声や権力あるいはその両者の形での社会的成功の追求は,競争社会における幸福にとって最も重要な障害である。成功は幸福の一つの要素でありそれが極めて重要な要素である人もいることを否定しようとしているのではない。しかし,成功はそれだけでは(by itself)大部分の人を満足させるには十分でない。あなたは,裕福で尊敬されるかもしれないが,もしも、友達がまったくおらず,興味を持つ対象もなく,自発的で無用な(=直接利益にならない)楽しみを持たないならば,惨めだろう。社会的成功のために生きることは,理論によって生きる一つの形ではあるが,理論によって生きることは全て(人生を)ほこりっぼく乾燥させるものである。
The pursuit of social success, in the form of prestige or power or both, is the most important obstacle to happiness in a competitive society. I am not denying that success is an ingredient in happiness to some, a very important ingredient. But it does not, by itself, suffice to satisfy most people. You may be rich and admired, but if you have no friends, no interests, no spontaneous useless pleasures, you will be miserable. Living for social success is one form of living by a theory, and all living by theory is dusty and desiccating.
出典: Bertrand Russell: The road to happiness (1952)
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/1952_RtoH-050.HTM
<寸言>
面従腹背によってかしずかれていても,権力を失えばあっという間に人は離れていくことを権力者はよく知っている。だからこそ一度つかんだ権力は何が何でも保持し続けようとする。権力者に追従する者もより大きな権力を持っているものに従うことによって、それよりは劣るがやはりそれなりの権力を手に入れる。自分の愚かさに気づくのは死に近づいた時であろう。