べンサムに戻ろう。彼は,社会道徳(注:morals 複数形)の基盤として,「最大多数の最大幸福」を唱えた。この原理に基づいて行動する人は,単に因襲的な教えに従っているだけの人よりも,ずっと骨の折れる生涯を送るであろう。彼は必然的に抑圧された人たちのために闘う者(擁護者)となるであろうし,そのために偉い人たち(大物/権力者)の敵意を招くであろう。彼は,権力者が隠したいと望む事実を公表するであろう。彼は,同情を必要としている人々からその同情を遠ざける(同情がいかないようにする)意図を持った虚偽を否定するであろう(注:たとえば,困窮した人々に援助の手は必要ない,あるいはそんなことはその人たちのためにならない,といった嘘を虚偽だと否定する)。
To return to Bentham: he advocated, as the basis of morals, 'the greatest happiness of the greatest number'. A man who acts upon this principle will have a much more arduous life than a man who merely obeys conventional precepts. He will necessarily make himself the champion of the oppressed, and so incur the enmity of the great. He will proclaim facts which the powers that be wish to conceal; he will deny falsehoods designed to alienate sympathy from those who need it.
出典: Bertrand Russell: The Harm That Good Men Do,1926.
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/0393_HGMD-140.HTM
<寸言>
「由らしむべし知らしむべからず」(一般大衆は愚かなので,説明しても理解しない。従って,社会秩序を保つためには,「余分なこと」は知らせない方がよい。)の精神で政治を行う保守政治家たち。つまり,自分たちは一般庶民とは違うと思っている。彼らは,選挙で落選すれば「タダの人」になってしまうが、国会に議席をもっていなくても,保守党に所属していれば(与党「関係者」であれば)一般国民の「上にたてる」と思っている人たちである。