罪と報復的な罰という一対の概念は,宗教および政治の(世界の)双方において,最も精力的な多くのものの根源にあるように思われる。私は,罪悪感情は,幼少期のごく初期に形成されるものだと信じるが,精神分析学者の何人かが言うように,その感情が生得的なものであるとは信じない。もし仮に,その感情を根絶することができるならば,世界中の残酷さの分量は劇的に減少するだろう,と私は考える。
The twin conceptions of sin and vindictive punishment seem to be at the root of much that is most vigorous, both in religion and politics. I cannot believe, as some psycho-analysts do, that the feeling of sin is innate, though I believe it to be a product of very early infancy. I think that, if this feeling could be eradicated, the amount of cruelty in the world would be very greatly diminished.
出典: Bertrand Russell: Ideas That Have Harmed Mankind,1946.
詳細情報:http://russell-j.com/beginner/0861HARM-060.HTM
<寸言>
人間には善意と悪意の正反対の感情がある。いや、愛情と憎悪は正反対の概念ではなく、愛情の反対は無関心だとよく言われる。そうであるとしたなられば、できるだけ無関心ではなく、いろいろなことに興味を持って客観的に事実を理解しようとする人々が増えれば、人間の悪意は減っていくであろう。しかし、国民に対して中立であるべき政府さえもが、情報を隠し、自分たちの統治に都合がよい誤解を国民がもってもらえるとよいと思って情報公開をおこたるとしたら、ましてや公文書を改ざんするようでは、なかなか前途多難である。