バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )
  

 アメリカ大陸の中央部においても,これと同様ことが生ずる。大部分のアメリカ人は,アメリカの流儀は唯一自然なやり方であり,また,アメリカの統治形態は唯一自然な統治形態であると考え,(従って)アメリカ社会における弊害は,人間本性にとって不可避なものである,と感じている。同じようなことは,多分,中国大陸の中央部や,その他広大で均一な大陸の中央部ではどこでも見られるものであるだろう。 それゆえ,「島国根性」は,島(国)の住人の特徴ではなく,逆に,広大な内陸諸国の住民の間で最も普通に見られる特徴であると思われる。

In the centre of the American continent the same sort of thing happens. The bulk of the population feels that American ways are the only natural ways, American forms of government the natural forms of government, and American abuses only such as human nature makes inevitable. The same sort of thing would be found in the centre of China or of any large homogeneous continental area. It would seem, therefore, that 'insularity', so far from being a characteristic of islanders, is, on the contrary, most often to be found among the inhabitants of vast inland countries.
 出典: On insularity (written in Sept. 21, 1932 and pub. in Mortals and Others, v.1, 1975.)
 詳細情報:http://russell-j.com/INSULAR.HTM

 <寸言>
「日本人は島国根性が強くて・・・」と,自虐的に言われることがよく(時々?)あります。しかし,ラッセルに言わせれば,戦争の影響で,孤立している国や地域が多いような時代にはそうであっても,交易がさかんな時代においては,島国には「島国根性」の特徴と言われるものはそれほどなく,むしろ(アメリカやロシアなど)領土の広い大陸諸国(の中央部)の方がより「島国根性」が強い,と指摘しています。ラッセルの主張はなるほどと思われ,日本人よりもアメリカ人の方が「島国」根性をより多く持っている(アメリカ以外の地域や国について無知なアメリカ人が少なくない)ように思われます。
 ラッセルがこのエッセイを書いたのは1932年のことであり、現在では大陸の中部においても世界中の情報が行き渡るようになってきて、だいぶ状況が変わってきています。しかし、たとえば、米国中部に住んでいる人たちは比較的保守的であり、米国以外の各国についての知識は現在でも乏しい人が多いようです。中国(大陸)では国家(指導層)に都合が悪い情報は閲覧できないという制限があります。
 島国(の国民)には違った意味での視野の狭さがあります。世界は多様化しており、国家を構成する国民がいろいろな人種からなっている国が増えてきています。日本では、移民を規制し、原則として難民を受け入れない方針をとっていますので、人種間の争いがおこならいという有利な点があるとともに、難民に対する理解のなさはなげかわしい状況です。日本人だって、最初のころは、大陸や南の島々など、いろんなところからやってきて、長い時間をかて混血し、今の日本人が形成されたという事実をいつの間にか(半分理解していながら)忘れてしまっています。
 ヨーロッパも難民問題で悩んでおり、難民を制限する方向にいっていますが、よく考えてみれば、現在のヨーロッパの住民は、ゲルマン民族の大移動で他から移ってきた移民であり、難民であったはずです。たとえば、ゲンマン民族が大陸からやってくることによって、イギリス(England地区)に当時住んでいた人がウェールズに(難民としてい)追いやられています。従って、ウェールズでは今でも「Brits out!」といった落書きが散見されます。