バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

 私の『西洋哲学史』がほぼ完成した。そこで,アメリカにおける私の著書の出版者である W・W・ノートンに手紙を書いて,私の困難な家計状況を考慮して,『西洋哲学史』(の印税=原稿料)の'前払い'をしてくれるかどうかを尋ねた。ノートンは,ジョンとケイトに対する愛情から,また旧友に対する好意として,500ドルを前払いしよう,という返事がきた。私は,他ならもっと支払ってもらえるだろうと考え,個人的には未知の間柄であったが,サイモン・アンド・シュスター(訳注:Simon and Schuster 社の社主=兄弟)に働きかけてみた。彼らはただちに即金で2,000ドル,半年後にさらに1,000ドルを支払うことに同意してくれた。

My History of Western Philosophy was nearly complete, and I wrote to W. W. Norton, who had been my American publisher, to ask if, in view of my difficult financial position, he would make an advance on it. He replied that because of his affection for John and Kate, and as a kindness to an old friend, he would advance five hundred dollars. I thought I could get more elsewhere, so I approached Simon and Schuster, who were unknown to me personally. They at once agreed to pay me two thousand dollars on the spot, and another thousand six months later.
 出典: The Autobiography of Bertrand Russell, v.2 chap. 6: America, 1968
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/AB26-070.HTM

 <寸言>
 ラッセルは英国人であるので、当然のこと、自分の著書は「まず」英国で出版し(あるいは英米同時に出版し),その後、各国で翻訳版がだされてきた。
 しかし、戦争の関係で2度、英国での出版は後回しになり、海外(米国)で最初に出版された。
 それは、第一次世界大戦中の1917年に出された Political Ideals と、第二次世界大戦中の1945年に出された A History of Western Philosophy である。Political Ideals の方はラッセルの反戦運動のために英国で出版できず、結局英国で最初に出されたのは 1963年のことであった。A History of Western Philosophy の方は、ラッセル一家が米国滞在中であり、子供が米国の大学に通う費用を捻出するために、まず米国で出版されたしだいである。なお、『西洋哲学史』の出版経由を知らない人が多く、初版の出版年を1946年と書いている人も少なくない。