第3章 進化 n.26 - 永遠の進歩という幻想?進化論に基礎を置くいかなる神学にも,(上記以外の)別のより重大な反対がある。この学説が流行しはじめた1860年代及び1870年代には,進歩は世界の法則として受けとられた。我々は年ごとに豊かになり,減税したにもかかわらず予算が余る状態にあったではないか? 我々(英国)の機械装置は世界の驚異であり,我々(英国)の議会政治は啓蒙された外国人のためのお手本ではなかったか? そうして,進歩が無限に続くことを誰が疑うことができたであろうか? 進歩を生み出した科学と機械の発明の才は,確かに,進歩をずっとより十分に生み出し続けるだろうと信頼されることが可能であった。そのような(雰囲気の)世界においては,進化(の概念)は日常生活を一般化したものにすぎないように思われた(のである)。しかし,その場合にも(even then その時でさえ),より思慮深い人々には別な側面がよく見えた(to the more reflective, another side was apparent)。成長を生み出す同一の法則が衰退も生み出す。いつかは,太陽は冷たくなるであろうし,地上の生命は死に絶えるであろう。動物や植物の全時代(動植物が栄えた全期間)も,熱すぎる時代と寒すぎる時代の幕間(まくあい)にすぎない。宇宙進歩の法則などまったく存在せず,エネルギーの拡散のために,均衡をとりつつ,ゆっくりした下向きに向かう傾向を伴った,上下の方向への振動が存在するのみである(注:このあたりは熱力学の第二法則,即ち、エントロピー増大の法則について言っているのか? つまり、熱というモノは熱い方から冷たい方に向かって(downward)流れるのであり、その逆はない)。これが,少なくとも,今日,科学が最も蓋然性があるとみなしていることであり,我々幻想を抱かない世代が容易に信じやすい考えである。今日,我々人類が持っている知識の限りでは,進化(理論)から窮極的に楽天主義的な哲学(注:進歩幻想)を論理的に導き出すことはできない(のである)。 |
Chapter 3: Evolution, n.26
But even then, to the more reflective, another side was apparent. The same laws which produce growth also produce decay. Some day, the sun will grow cold, and life on the earth will cease. The whole epoch of animals and plants is only an interlude, between ages that were too hot and ages that will be too cold. There is no law of cosmic progress, but only an oscillation upward and downward, with a slow trend downward on the balance owing to the diffusion of energy. This, at least, is what science at present regards as most probable, and in our disillusioned generation it is easy to believe. From evolution, so far as our present knowledge shows, no ultimately optimistic philosophy can be validly inferred. |