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バートランド・ラッセル 教育論 第二部 性格の教育_第11章_愛情と同情 (松下 訳) - Bertrand Russell On Education, 1926

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前ページ(Back)  次ページ(Forward) Chap. 11 Index Contents(目次)

広い同情心を養う方法


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 (同情心の)本能的な芽ばえがあれば広い同情心を養うことは主に知的な事柄である。それ(広い同情心を養えるかどうか)は,子供の注意を正しい方向へ向けてあげて,軍国主義者や権威主義者が隠蔽しているいろいろな事実を真に理解できるようにしてあげられるかどうかにかかっている。たとえば,ナポレオンが勝利した後に,アウステルリッツの戦場(注:アウステルリッツの戦い)を歩きまわるナポレオンを,トルストイが描いている箇所をとりあげてみるとよい。大部分の歴史書は,戦いが終わるとただちに戦場をあとにする(それ以上その戦争についての記述は終えてしまう)。即ち,あと12時間,戦場に留まるという簡単な処置で,まったく異なった戦争の様相が見えてくるのである。これは,事実を隠すことでなされるのではなく,より多くの事実を教えることでなされる。そうして,戦争にあてはまることは,他の形の残酷さにも、同様に,あてはまる。どの場合においても,道徳(教訓)を指し示す必要はまったくない。即ち,物語を正しく語るだけで十分である。お説教をしないで,事実が子供の心におのずと道徳観念を生み出すようにすればよい。(松下注:つまり,歴史教育のなかで道徳心や愛国心を強調しなくても,同情心の本能的な芽生えさえ生じていれば、事実をありのままに示せば,そのような道徳観念は子どもの心に自然に生じるであろう,との趣旨。)

Pt.2 Education of Character - Chap.11 Affection and Sympathy

The cultivation of wide sympathies, given the instinctive germ, is mainly an intellectual matter : it depends upon the right direction of attention, and the realization of facts which militarists and authoritarians suppress. Take, for example, Tolstoy's description of Napoleon going round the battlefield of Austerlitz after the victory. Most histories leave the battlefield as soon as the battle is over ; by the simple expedient of lingering on it for another twelve hours a completely different picture of war is produced. This is done, not by suppressing facts, but by giving more facts. And what applies to battles applies equally to other forms of cruelty. In all cases it should be quite unnecessary to point the moral ; the right telling of the story should be sufficient. Do not moralize, but let the facts produce their own moral in the child's mind.

(掲載日:2015.05.24/更新日: )