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バートランド・ラッセル自伝 第1巻第1章 - 使用人達の想い出(松下彰良・訳) - The Autobiography of Bertrand Russell, v.1

前ページ 次ページ 第1巻 第1章(幼少時代)累積版 総目次
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 ペンブローク・ロッジに住み始めた初めの頃は,私の生活にとって,自分の家族よりも使用人たち(←召使い)の方がより大きな役割を演じた。(思い出す順にあげていくと,まず)祖母が子供だった頃祖母の子守をしていた,ミセス・コックスという年配の女中頭がいた。彼女は卒直で,活力があり,厳格で,ラッセル家に対し献身的であり,私にはいつも親切であった。
 マックァルパインという執事がいたが,彼は典型的なスコットランド人であった。彼は私を膝の上にのせて,新聞に載った鉄道事故の記事をいつも読んで聞かせてくれた。彼をみつけるやいなや私はいつも彼の膝の上にのってこう言った。「事故の話をして!」

 それからミショー(松下注:日高一輝氏は Michaud をミショウドと訳しておられるが,フランス人であるから,ミショーと訳すべきであろう。)というフランス人のコックがいた。彼女はかなり怖かったが,畏怖心をおこさせるような性格の持ち主であるにもかかわらず,私は,焼き肉用の肉が古風な焼き串に刺さって回転するのを見たり,また,砂糖よりも好きだった食塩の塊りを'塩入れ'からそっと盗み取ったりするために,台所にいくのを我慢することはできなかった。彼女は肉切り包丁を持って追いかけてきたものであるが,私はいつも容易に逃げおおせた。
 戸外には,マックロビーという庭師(造園師)がいたが,私が5歳の時やめていったので,彼についての記憶はほとんどない。それからロッジ管理人のシングルトン夫妻がおり,私は彼らがとても好きだった。というのは,彼らは私に,当時(子供には)厳重に禁じられていた'焼きリンゴ'と発泡飲料(松下注:アルコール分がほとんどないギンジャyー・エールのようなものか?)をくれたからである。
 マックロビーの後を継いだのは,ヴィドラーという庭師で,彼は英国人というのは,イスラエルの失われた十支族説明その1その2であると聞かせてくれたが,私は,彼のいうことを(当時)完全に信じていたとは思わない。
写真:「日の名残り」(ブルーレイ版)


During my early years at Pembroke Lodge the servants played a larger part in my life than the family did.
There was an old house-keeper named Mrs Cox who had been my grandmother's nursery-maid when my grandmother was a child. She was straight and vigorous and strict and devoted to the family and always nice to me.
There was a butler named MacAlpine who was very Scotch. He used to take me on his knee and read me accounts of railway accidents in the newspaper. As soon as I saw him I always climbed up on him and said: 'Tell me about an accident-happen.'
Then there was a French cook named Michaud, who was rather terrifying, but in spite of her awe-inspiring qualities I could not resist going to the kitchen to see the roast meat turning on the old-fashioned spit, and to steal lumps of salt, which I liked better than sugar, out of the salt box. She would pursue me with a carving knife, but I always escaped easily.
Out-of-doors there was a gardener named MacRobie of whom I remember little as he left when I was five years old, and the lodge-keeper and his wife, Mr and Mrs Singleton, of whom I was very fond, as they gave me baked apples and beer, both of which were strictly forbidden.
MacRobie was succeeded by gardener named Vidler, who informed me that the English are the lost Ten Tribes, though I do not think I quite believed him.