バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

 11歳の時私は,兄を先生にして,ユークリッド幾何学を学習し始めた。これは私の生涯において非常に重要な出来事の1つであり,初恋と同様幻惑的なものであった。この世にこのように素晴らしいものがあろうとは,私はそれまで想像したことがなかった。私が第5公準を学んでから,兄はこれは非常に難しいと一般には考えられていると言ったが,私は少しも難しいとは思わなかった。これは,私が何らかの知性を持つ'きざし'が現れた最初であった。

At the age of eleven, I began Euclid, with my brother as my tutor. This was one of the great events of my life, as dazzling as first love. I had not imagined that there was anything so delicious in the world. After I had learned the fifth proposition, my brother told me that it was generally considered difficult, but I had found no difficulty whatever. This was the first time it had dawned upon me that I might have some intelligence.
 出典:The Autobiography of Bertrand Russell, v.1, chap. 1, 1967
 詳細情報:http://russell-j.com/beginner/AB11-290.HTM

 <寸言>
  数学は、ラッセルが最重要視する「明晰な思考」のお手本のようなもの。数学が正しいことを証明する過程で「ラッセルのパラドクス」の発見で窮地に陥ってしまう。それも「タイプ理論」により一応の理屈付けは可能となり、算術については数学は記号論理学によって導出できた(正しいことが証明できた)が、結局は、ゲーデルの不完全性定理の発見へと導き、間違っているとは証明できないにしても、正しいとも証明できないものが数学にはある、ということがわかってしまった。
 そうだからと言って、数学は役に立たないわけではなく、最強の武器であり続けている。相対性理論や量子力学に不備があるとしても、真理探求の有力な理論であることに変わりはないのと同様である。