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バートランド・ラッセル 教育論 第二部_性格の教育_第8章_正直(誠実)であること(松下彰良 訳) - Bertrand Russell On Education, 1926

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第二部_性格の教育_第8章_正直(誠実)であること - 偽善に満ちた社会


ラッセルの言葉366
 我々は,ごまかしに満ちた世界に住んでいる。ごまかすことなく育てられた子供は,通常尊敬に値すると考えられている多くの事柄をきっと軽蔑する(軽蔑するように運命づけられている)。軽蔑はよくない感情だから,これは残念なことである。子供の好奇心がそういう事柄に向かったときには満足させてあげなければならないが,私は,(わざわざ)そういうこと(注:偽善的な事柄)に子供の注意を促すようなことはすべきではないだろう。正直(誠実)であることは,偽善に満ちた社会においては,ちょっとしたハンディキャップになる。しかし,このハンディキャップは,恐怖心を持たないという利点によって,十二分に償われる。恐怖心があれば,だれ一人として,真実を語ることはできないのだ。私たちは,わが子が公平で,正直で,卒直で,自尊心のある人間になってほしいと願っている。私としては,わが子が奴隷の技能で成功するよりも,むしろ,こういう性質をもって失敗するのを見たいと思っている。すばらしい人間になるためには,生まれつきの誇りと高潔さがある程度不可欠である。そういう性質があれば、ある種の寛容な動機から嘘を言う場合は別として,嘘をつくことは不可能になる。私は,たとえ世俗的な不幸を招くとしても,わが子には思想と言葉(発言や論文執筆)において正直(誠実)であってほしいと思っている。なぜなら,富や名誉よりも重要なものが問われているからである。

Pt.2 Education of Character - Chap. 8 Truthfulness

We live in a world of humbug, and the child brought up without humbug is bound to despise much that is commonly thought to deserve respect. This is regrettable, because contempt is a bad emotion. I should not call his attention to such matters, though I should satisfy his curiosity whenever it turned towards them. Truthfulness is something of a handicap in a hypo-critical society, but the handicap is more than out-weighed by the advantages of fearlessness, without which no one can be truthful. We wish our children to be upright, candid, frank, self-respecting; for my part, I would rather see them fail with these qualities than succeed by the arts of the slave. A certain native pride and integrity is essential to a splendid human being, and where it exists lying becomes impossible, except when it is prompted by some generous motive. I would have my children truthful in their thoughts and words, even if it should entail worldly misfortune, for something of more importance than riches and honours is at stake.

(掲載日:2015.04.19/更新日: )