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バートランド・ラッセル 自伝 第1巻第6章
チェイン・ウォーク14番(松下彰良 訳)

The Autobiography of Bertrand Russell, v.1

前ページ 次ページ 第1巻 第6章(プリンキピア・マテマティカ)目次 総目次


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 秋がくると,私たち夫婦は6ヶ月の期限でチェイン・ウォーク(Cheyne Walk/右地図参照) に家を借りて住むようになり,人生(生活)は,以前よりも耐えられるものとなった(注:チェイン・ウォーク or チェイニー・ウォークは,ロンドン・チェルシー地区のテムズ川沿いにある通りで,著名人が多く住んでいた,また住んでいることで有名であり,ラッセル夫妻は,チェイン・ウォーク14番に1902年に住んでいた。ラッセルは田舎暮らしが好きであったが,アリスは田舎暮らしはどちらかというと好まなかった。アリスの両親と離れるために,妥協した結果か?/参考1:チェイン・ウォークに住んでいた著名人/参考2:衛星写真私たちはそこで非常に多くの人たちと会い −−多くは愉快で感じのよい人たちであったが−− 私たちは二人とも,次第に外部との接触が多くなり始めた。しかしそれは,常に精神的な負担を与えるものであった。私がアリスと同じ家に一緒に暮らしている間,彼女はベッドに入ったあとで,時々,化粧着のままで私のとこにやって来て,一緒に夜を過ごしてくれるよう私に懇願した。時々私も彼女の言うとおりにしたが,結果は全く不満足なものであった。そのような状態が9年間続いた(注:ラッセルは,9年後の1911年にアリスのもとを去ることになる)。その間,彼女は私の心をなんとか取り戻そうと思い,他の男性にはまったく関心を示さないようになった。私は,その9年間,他の女性とはまったく性的関係をもたなかった。私は,彼女の惨めな思いを軽減してあげたいと思い,1年に2度ほど,彼女と性行為を試みたが,彼女はもはや私を引きつけることはなく,それは無益な試みであった。その長い歳月を今振り返ると,私はもっと早く彼女と同じ家で暮らすのをやめるべきだったと思われる。しかし彼女は私と一緒にいたいと願っており,もし私が出ていけば自殺すると言って私を脅かすことさえした。当時私には,(そのもとに)行きたいと思う女性は他にまったくいなかったので,彼女の願いを聞いてあげない十分な理由は,特にないように思われた。


When the autumn came we took a house for six months in Cheyne Walk, and life began to become more bearable. We saw a great many people, many of them amusing or agreeable, and we both gradually began to live a more external life, but this was always breaking down. So long as I lived in the same house with Alys she would every now and then come down to me in her dressing-gown after she had gone to bed, and beseech me to spend the night with her. Sometimes I did so, but the result was utterly unsatisfactory. For nine years this state of affairs continued. During all this time she hoped to win me back, and never became interested in any other man. During all this time I had no other sex relations. About twice a year I would attempt sex relations with her, in the hope of alleviating her misery, but she no longer attracted me, and the attempt was futile. Looking back over this stretch of years, I feel that I ought to have ceased much sooner to live in the same house with her, but she wished me to stay, and even threatened suicide if I left her. There was no other woman to whom I wished to go, and there seemed therefore no good reason for not doing as she wished.
(掲載日:2005.12.12/更新日:2011.5.5)