
観察者は, 自分では石を観察していると思っている時, 実際には - 物理学を信ずべきであれば - 彼自身に対する石の影響を観察しているのである(注:素朴実在論は間違っているように思われる)。従って, 科学は,それ自身と戦っているように思われる。つまり, 科学は, 最大限客観的であろうとする時, 意に反して主観性に陥ってしまっていることに気づく。素朴実在論から物理学が導かれるが, 物理学がもし真であるならば, 物理学は素朴実在論は偽であることを示す。従って、素朴実在論は, もし真であるなら,偽である。
The observer, when he seems to himself to be observing a stone, is really, if physics is to be believed, observing the effects of the stone upon himself. Thus science seems to be at war with itself: when it most means to be objective, it finds itself plunged into subjectivity against its will. Naive realism leads to physics, and physics, if true, shows that naive realism is false. Therefore naive realism, if true, is false; therefore it is false.
出典: Bertrand Russell: An Inquiry into Meaning and Truth, 1940,Introduction.
詳細情報.: https://russell-j.com/cool/37T-INTRO02.HTM
<寸言>
多くの人が科学に信頼を置き、多くの人が進化論を信じ、人類が地上に生まれる前の時代があったことを信じています。地球上に、人間という観察者がいない時代にも、また、生命が存在しない時代にも、自然としての地球が存在していたと信じています。これに対し、創造神を信ずる人々(たとえば、熱心なキリスト教徒)は、絶対神が人間を創造したと信じているので、アメーバから人間まで進化したきたという歴史(進化論)を信じていません。
人間であれ、人間以外の他の動物であれ、感覚器官の能力はそれほどたいしたものでありません。人間個人があるいは人間集団が、世界全体を正しく認識することなど不可能です。それでは、人間の五感がまったく関与しない「客観的な」科学とはどういったものでしょうか!? そんなものがあるのでしょうか?
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