いかなる孤立した情熱も, 孤立した状態では, 狂気である。正気とは, 種々の狂気を統合(総合)したものとして定義することが可能である。いかなる支配的な情熱も, (その情熱の目的や対象を)達成できないという, 支配的な恐怖を生み出す。いかなる支配的な恐怖も悪夢を生み出し, それは, 時には明白かつ意識的な狂信の形で, 時には人を無力にさせる臆病の形で, 時には夢の中でのみ表現される無意識あるいは潜在意識の恐怖の形で, 現れる。
Every isolated passion is, in isolation, insane; sanity may be defined as a synthesis of insanities. Every dominant passion generates a dominant fear, the fear of its non-fulfilment. Every dominant fear generates a nightmare, sometimes in the form of an explicit and conscious fanaticism, sometimes in a paralysing timidity, sometimes in an unconscious or subconscious terror which finds expression only in dreams.
Source: Bertrand Russell: Nightmares of Eminent Persons, 1945, Introduction.
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<寸言>
ラッセルは80歳になって急に小説が書きたくなります。なぜそんな気になったのかというと、論文や散文で述べるよりも、小説の形にしたほうが伝わりやすいこともあるという理由もありますが、それよりも、急に創作意欲がわいてきたので書いてみたしだいである、と言っています。
なお、上記の文章を「意訳」すると次のようになります。このほうが理解しやすいかも知れません。
「正気」というのは,平凡かつ起伏のない感情の寄せ集めでできているものではない。それぞれの情熱(強い感情)を一つ一つとりあげれば「狂気」に映るかもしれないが,それらの情熱(+の狂気と-の狂気)をまとめると,全体としてみれば,プラスマイナス零となる。そういった状態を「正気」というのであろう。)
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