マラコ博士は応えた。「ああ,残念ながら,我々の聖なる宗教(キリスト教)には,あなたが十分に理解していないことがたくさんあります。懺悔をする必要のない九十九人の正しい人間が,神のふところに戻った一人の罪人よりも,天国では喜びを得ることが少ないという寓話を,じっくり考えたことがおありでしょうか? フッフッフッ」
'Alas,' Dr. Mal1ako replied, 'there is, I fear, much in our holy religion that you have failed adequately to understand. Have you reflected upon the parable of the ninety-nine just men who needed no repentance, and caused less joy in Heaven than the one sinner who returned to the fold?
Source: Bertrand Russell: Satan in the Suburbs, and Other Stories, 1953.
More info.: https://russell-j.com/cool/45T-0101.HTM
<寸言>
宗教に対する態度にはおおざっぱに言って3種類くらいあります。特定の宗教を固く信じる人(タイプA)、ゆるやかに信じる人(タイプB:狂信でない限りいかなる宗教を信じてもよいと考える人)、それから宗教を信じない人(タイプC:いわゆる無神論者)の3種類です。哲学的には、この3種類以外に、不可知論者の立場(タイプD:神の存在を論理的に証明すること(肯定すること)も否定することもできないと主張する立場)があります。ラッセルは、哲学的には不可知論者であるが実質的には無神論者であると言っています。
ラッセルがあげた寓話は、多神教の国々の人々にはピンとこないかも知れませんが、一神教の国々の人々にはその意味やニュアンスがよくわかるはずです。
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