集団ヒステリーは人間だけに限られた現象ではない。それはいかなる群居性の種にも見られるであろう。私はかつて中央アフリカの野生象の大群が初めて飛行機を見て激しい集団的恐慌状態に陥っている写真を見たことがある。象は, 普段, 穏やかで賢い野獣であるが, この未曽有の, 騒々しい未知の空の動物という現象は,群れ全体を完全に動揺させた。全ての象が恐怖にとりつかれ, そうして一匹一匹の恐怖は他の象に伝わり,ひどく増大したパニックを引き起こした。けれども,彼らの中にはジャーナリストはいなかったので,その恐怖は飛行機が見えなくなったとき消滅した。
Mass hysteria is a phenomenon not confined to human beings; it may be seen in any gregarious species. I once saw a photograph of a large herd of wild elephants in Central Africa. Seeing an airplane for the first time, and all in a state of wild collective terror. The elephant, at most times, is calm and sagacious beast, but this unprecedented phenomenon of a noisy, unknown animal in the sky, had thrown the whole herd completely off its balance. Each separate animal was terrified, and its terror communicated itself to the others, creating a vast multiplication of panic. As, however, there were no journalists among them, the terror died down when the airplane was out of sight.
Source: Bertrand Russell: To Face Danger without Hysteria .In: New York Times Magazine, 21 Jan. 1951, pp.7, 42, 44-45.
More info.: https://russell-j.com/beginner/KAMI-43.HTM
<寸言>
現在では、放送やネット・メディアが発達しており、紙媒体のメディアは相対的に影響力が減少しています。その結果、古いメディアのジャーナリストによって集団ヒステリーがおこされることはほとんどなくなりました。
現在もっと危惧されるのは、権力(国家など)によるマスコミのコントロールです。それは、共産主義国に限らず、民主主義国においても、常に用心すべき事柄です。日本においては記者クラブ制度が権力によるマスコミのコントロールを可能にしており、楽に取材をしたい記者にとっては、とっても好都合な制度です。
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