私は,先入観(偏見)を持たない人間はいないと思っているので,大規模の歴史と取り組むにあたってなしうる最善のことは,人間の先入観(偏見)を認め,不満な読者のためには反対の先入観(偏見)を表明している他の著者を探してあげることである,と考えている。どちらの先入観(偏見)がより真実に近いかは,後世にゆだねなければならない。歴史(書)執筆に関するこのような観点から,私は『西洋の知恵』よりも『西洋哲学史』(注:両方ともラッセルの著作)の方を好む。『西洋の知恵』は『西洋哲学史』をもとにして執筆したものである。
Since I do not admit that a person without bias exists, I think the best that can be done with a large-scale history is to admit one's bias and for dissatisfied readers to look for other writers to express an opposite bias. Which bias is nearer to the truth must be left to posterity. This point of view on the writing of history makes me prefer my History of Western Philosophy to the Wisdom of the West which was taken from the former.
Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.2 chap. 6: America, 1968.
More info.:https://russell-j.com/beginner/AB26-080.HTM
<寸言>
できるだけ先入見や先入観は持たないほうがよいですが、それには限界があることをよく自覚する必要があります。良い先入観もあると思われます。人類は存続したほうがよいと思うのは人間の先入観であり、昆虫からみれば人間は存在しないほうがよいということになりそうです。
従って、できるだけ先入観を持たないとともに、先入観をなくすことはできないという自覚を持つことが重要と思われます。
ラッセルの『西洋哲学史』はラッセルの個人的意見を書きすぎていると言って批判する人がいますが、的外れの批判が多く見られます。そういった誤解を持つ人が多いせいか、学術的に評判のよい哲学史でも、研究者や学生にしか読まれないものが多いのではないでしょうか?
#バートランド・ラッセル #Bertrand_Russell