
![]() ラッセル英単語・熟語1500 |
まず、人によって良心が異なるということは、この理論(注:行為者は自分の良心に従って行動すべき)を否定する論拠にはならないということに注意すべきである。クエーカー教徒と首狩り族は、それぞれ自分の良心に従って正しい行為をする。(即ち)クエーカー教徒は政府が殺すべきだと言うときに殺さず、首狩り族は政府が殺すべきではないと言うときに殺すのである。この理論には、正しい行動が実現する傾向にある客観的な「善」は必要ない。なぜなら「正しい」行為は、その結果によってではなく、良心の声であるはずの原因によって定義されるからである。
It should be observed, to begin with, that the differences between different men’s consciences afford no argument against this theory. The Quaker and the head-hunter each do right in following his own conscience, the Quaker in not killing when the Government says he should, and the head-hunter in killing when the Government says he should not. The theory has no need of an objective “good” that right action should tend to realize, since “right” action is defined, not by its effects, but by its cause, which must be the voice of conscience.
Source: Bertrand Russell: Human Society in Ethics and Politics, (1954), chapter 5
More info.:https://russell-j.com/cool/47T-0607.htm
<寸言>
戦時においては、お国の兵隊さんが敵国人(中国人だったり、米国人だったり、その時代によって異なる)を多数殺害することは、「正しい」ことであり「名誉な」ことだとされています(あるいは、少なくとも、過去そうでした)。
イスラエル人、あるいは、ユダヤ人(イスラエル国民の約8割)の多くは、イスラエルの土地は、旧約聖書(神との約束)によって神からユダヤの民に与えられたものであり、人間の作った法律(国際法)や国際組織(国連)の決定より優先されると考えているようです。従って、イスラエルの建国(1948年)の前にパレスティナ人が住んでいたとしても、神から約束されたユダヤ人の土地を取り返しただけであり、それに抗議する者は誰であっても排除するのは当たり前だということになるようです。
2000人ほどのイスラエル国民が「テロリスト」であるハマスに殺害されたことに対し、ハマスをこの地上から「抹殺する」とイスラエル政府は宣言しています。そうして、ハマスを攻撃した時にガザの住人が多数まきぞえで死んでも、「不幸なことではあるが仕方がないこと」であり、「それもこれもハマスのせい(責任)」であり、「ハマスの存在を許しているガザ市民のせいでもある」、という考えのようです。
普通の感覚なら、一般市民を15000人以上殺害すること(その大半は子供や女性)は国際法が禁じている戦争犯罪だと考えますが、信仰熱きイスラエル国民の多くはそうは思わないようです。
ラッセルは適切な行為かどうかは「結果」によって判断すべきだと考えますが、イスラエルの多くの国民は、良心の声という「原因」によって判断されると考えているようです。一神教の人が多いアメリカも(共産主義という宗教を掲げるソ連も中国も)、同様に考える人が多いようです。旧教に比べ新教はよりヒューマンになったと言う「信者」もいますが、それは贔屓の引き倒しです。
#バートランド・ラッセル #Bertrand_Russell