ラッセル英単語・熟語1500 |
先の大戦中(第一次大戦中)、多くの英国の愛国者達は、ヒトラーの敗北を望む反ナチス・ドイツ人を認めることは困難であった。国際連盟が発足する前は、一国の外交政策は自国の利益のみを考慮するのは当然とされていた。それ以降、その慣行は変わらないままであったが、その理論はいくらか修正されてきている。(たとえば、)国歌を斉唱するとき、外国人の悪意を煽るような(次のような)台詞を力強く歌うことは、もはや許されない:
彼らの悪巧みを挫けさせよ、
彼らの政治を混乱させ
そして彼らを堕落させよ
しかし、私たちの多くは、今でも同じ気持ちを心に抱いている。
During the recent war, many British patriots had difficulty in approving of anti-Nazi Germans who desired the defeat of Hitler. Until the inauguration of the League of Nations, it was taken as axiomatic that a country's foreign policy should take account only of its own interests. Since that date, though the practice has remained unchanged, there has been some modification of the theory. When we sing the National Anthem, we no longer permit ourselves to proclaim with gusto the lines wishing ill to foreigners:
Frustrate their knavish tricks.
Confound their politics.
And make them fall.
But many of us still cherish the same sentiments in our hearts. Source: Bertrand Russell: Human Society in Ethics and Politics, (1954), chapter 5
More info.:https://russell-j.com/cool/47T-0502.htm
<寸言>
戦時中の日本もドイツと同様に国民は愛国主義に染められていました。第二次世界大戦後、日本は急変しましたが、ナショナリズムはくすぶり続けています。現在でも「自国の善は全人類の善に優先する」と考えている人達がそこそこあります。頭ではそれはいけないと言い聞かせようとしている人も、心はナショナリズムにシンパシーを感じている人はたくさんいます。
ラッセルにも若い時にはそれに似た心的傾向がのこっていました。この文章の直前に、次のように書いています。
「私は、日露戦争中に"ロシア軍の失敗を祝して"乾杯した何人かのロシア人革命家達を知っている。私は理性では彼らに同意したが、(祖国の敗戦を望んでいることには)衝撃を受けた。」(I knew some Russian revolutionaries during the Russo-Japanese war who drank a toast "to the failure of Russian arms"; it gave me a shock, although with my reason I agreed with them.)
#バートランド・ラッセル #Bertrand_Russell