バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

ラッセル英単語・熟語1500

 私達が「善」を「欲望の充足」と定義したことに対して、欲望の中には悪であり、その充足はさらなる悪であるという反論が出るかも知れない。最も明白な例は残酷さである。AはBが苦しむことを望み、その欲望を満たすことに成功したとする。この状態全体が善でないことは明らかであり、私たちの定義(注:最大多数の最大幸福をめざすこと)はそれが善であることを意味しない。Bの欲望は満たされないし、Bに敵意のない普通の人々の欲望も満たされない。Aの満足は他者にとっては不満の種であり、Bが苦しむべきだというAの欲望は、Bが共同体の憎悪を買うような人物でない限り、ほとんどの人が存在しないことを望むものである。

Against our definition of “good” as "satisfaction of desire” an objection might be raised on the ground that some desires are evil and their satisfaction is a further evil. The most obvious example is cruelty. Suppose A desires that B should suffer, and succeeds in satisfying his desire; is this good? Clearly the whole state of affairs is not good, and our definition does not imply that it is good. B’s desires are not satisfied, and no more are those of normal people who have no animus against B. A’s satisfaction is a source of dissatisfaction to others, and A’s desire that B should suffer is one which most people will desire not to exist, unless B is a person who has incurred the hatred of the community.
More info.:https://russell-j.com/cool/47T-0415.htm

<寸言>
 これに対しても、「しかし、もしAの満足を単独で想像できたとしたら、それはやはり悪ではないか?」という反論や疑問がでてきそうです。それを予想して、続けて次のように言っています。(長くなるので割愛しました。)

「しかし、もしAの満足を単独で想像できたとしたら、それはやはり悪なのだろうか? 例えば、AがBに対する狂気の憎悪に満ちた精神異常者で、精神病院に収容されていたとしよう。Bが苦しんでいると思わせることが望ましいと考えるかもしれないし、全体として、Bの繁栄を考えて怒りの発作に駆られるよりは、そう思わせた方が事態は好転するだろう。一般的な利益に反する欲望が単独で満たされるのは、そのような例外的な状況においてのみである。従って、満足を単独で考え、その付随物や結果を無視する限り、ある満足を悪いものとみなす理由はないと私は思う。」

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