バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

ラッセル英単語・熟語1500

 あるいは、近親相姦の禁止を取り上げてみよう。たとえば、原子爆弾が世界の人口を、兄(あるいは弟)一人、妹(あるいは姉)一人にしてしまったとしたらどうだろうか? 彼らは、(近親相姦は絶対ダメだということで)人類が滅び去るままにしておくべきだろうか? 私には答えがわからない。 しかし、単に、近親相姦が邪悪なことだという根拠だけでそれが肯定されうる、とは私は考えない。
 このような倫理的な問題(倫理的ジレンマ)(casuistical problems)には終わりがなく(問題がつきることなく)、答えが理論的に可能になる唯一の方法は、 明らかに、行為が役立つ目的を見出し、そうして、その行為がその目的を助長するものとされるときに、その行為を「正しい」と判断することである。
 われわれはこのようにして、倫理学の根本概念として、「正しい(right 正義)」「間違っている(wrong 悪)」よりもむしろ「良い (good)」「良くない/悪い (bad)」へと導かれる。


Or take the prohibition of incest. Suppose atomic bombs had reduced the population of the world to one brother and sister; should they let the human race die out? I do not know the answer, but I do not think it can be in the affirmative merely on the ground that incest is wicked. To such casuistical problems there is no end, and clearly the only way in which an answer is theoretically possible is to discover some end which conduct should serve, and to judge conduct to be "right" when it is calculated to promote this end.
We are thus led to “good” and “bad”, rather than “right” and “wrong”, as the fundamental concepts of ethics.
 Source: Bertrand Russell: Human Society in Ethics and Politics, (1954), chapter 3
More info.:https://russell-j.com/cool/47T-0305.htm

<寸言>
 最近では画像として貼り付けた「トロッコ問題」を例にあげる人が多くいます。(「一人だけひかれてしまう」だけではピンとこないかも知れないので、その人は「最愛の人」としてみました。)
 近親相姦の例は極端な例ですが、ここで重要なのは、倫理学の根本概念は、「「正しい(right 正義)」「間違っている(wrong 悪)」よりもむしろ「良い (good)」「良くない (bad)」」である、という指摘です。
 欧米、特に米国は、「正義」の概念を多用しますが、ラッセルから見れば、倫理的な問題については、正邪を峻別しない、東洋的な態度のほうがベターだということになります。
 たとえば、これまで、ハマスによって(10月24日まで)に約1,400人のイスラエル国民が殺害されており、それに報復することは「義務」であり、「正義」であるとイスラエル及び欧米の西側諸国は考えます。
 そうして、ハマスを狙って攻撃した結果、そばにいた民間人が多数(子供だけで2000人以上)亡くなっても(かわいそうだが)仕方がないことだ(ハマスを排除しないガザ市民の責任もある)と、イスラエルも米国のイスラエル支持者は考えているようです。そうして、復讐を誓うパレスチナ人を大量に生み出していることに気が付きません。いや、気が付かないふりをしている人も多そうです。

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