バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Russell Quotes )

ラッセル英単語・熟語1500

 私達は皆、ある種の倫理規範は他の倫理規範よりもより良い(優れている)という考えを抱くが、まさにそれと同じように、私達は - 良心も人によって異なることがわからないほど無知だということでなければ - ある種の良心は他の良心よりもより良いと考えざるを得ない(must hold)。 それゆえ、良心以外に、どのような行為を望ましいと考えるべきかを決めるある種の規準(criterion)がなければならない。しかもこの規準は「殺すなかれ」「盗むなかれ」というような行為の規範から導き出すことはできない。 というのは、すでに見たように、そのような規則については、全般的な一致はないからである。

Just as we all hold that some ethical codes are better than others, so we must hold that some consciences are better than others, unless we are so ignorant as not to be aware that consciences differ. There must therefore be some criterion other than conscience by which to decide what is to be considered desirable conduct, and this criterion cannot be derived from rules of conduct such as "do not kill" or "do not steal", because, as we have seen, there is no general agreement as to such rules.
 Source: Bertrand Russell: Human Society in Ethics and Politics, (1954), chapter 3
More info.:https://russell-j.com/cool/47T-0305.htm

<寸言>
「(他人を)殺すなかれ」がどうして基準(criterion)にならないのか、と疑問に思う人が多いのではないでしょうか?

 「何があっても人を殺してはいけない」と大部分の人が思っていても、実際のところ、防衛戦争や自己防衛における殺人は認められており、死刑制度がある国もまだけっこう存在しています。
 「平和主義」「人道主義」の日本でさえ同様です。死刑制度の可否ひとつとっても、一般的な合意はありません。死刑制度があれば、「二人以上殺したら、死刑になる可能性があるなら何人殺しても同じだ」と考えて連続殺人する者がでる(実際そういう例が時々ある)と考える人もいれば、「死刑制度があるからこそ殺人を思いとどまる人が多い」と考える人もいます。死刑制度反対の意見には、少数であっても「無実の人を死刑にしてしまう可能性」があること(また実際にそういうことがあったであろうこと)や、「死刑の時に死刑執行を行う人が存在」し、そういう人に対してはよい感情はもたないだろう、というものがあります。そういうことはあるだろう(あるいはあるかも知れない)がそれは仕方がないことだと考える人も、「無実の罪」で自分が死刑になりかねない事態になれば、納得しないと思われます。そういった例外には自分は入らない(自分は多数派であり、マイノリティには属さない)という固い信念を持っている人が多いようですが・・・。

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