ラッセル英単語・熟語1500 |
・・・。モロク神に子供を(生贄として)捧げる古代セム族の風習や、ローマ人の父親が自分の子供に対して生殺与奪の権を持つこと、かつての中国の女性の足を縛る習慣(纏足 tensoku)や、日本人の「妻は木の枕で眠り、夫は柔らかい枕で眠る」という決まりを良いと考える肯定する人は、西洋文明全体を見渡してもほとんどいないだろう。・・・。
私が現在論じているのは、(それらの慣行を擁護する)彼らや(反対する)我々が一致する何かがあるだろうということ、つまり、ある道徳規範が他の道徳規範より優れているかも知れないし、劣っているかも知れない。ということである。このことが認められれば、倫理学には道徳規範よりも優れた何かが存在し、その何かによって道徳規範は判断されるべきである、ということになる(結論になる)。
... Throughout Western civilization there are very few who would approve the ancient Semitic custom of sacrificing children to Moloch, the Roman father's power of life and death over his children, the former Chinese practice of binding women's feet, or the Japanese rule that a wife must sleep on a wooden pillow while her husband sleeps on a soft one. ... What I am arguing is something as to which they and we would be in agreement, namely that one moral code may be better or worse than another. When this is admitted, it follows that there is something in ethics that is superior to moral codes, and that by means of this something they are to be judged.
Source: Bertrand Russell: Human Society in Ethics and Politics, (1954), chapter 3
More info.:https://russell-j.com/cool/47T-0302.htm
<寸言>
日本の家制度は、1947年の民法改正によって、廃止されました。本書(Human Society in Ethics and Politics)は1954年の出版ですので、日本の家父長制が廃止されて7年経過しています。日本は戦後激変したので、7年もたっていれば相当変わったことが想像されますが、日本の戦後の家族の姿に関する情報は、イギリス(のラッセル)にはほとんど届いていなかったようです。
「郷に入らずんば郷に従え」ということで道徳規範を相対化するだけですますことも一手かも知れませんが、それでは紛争が起こった時に調停手段がなくなってしまいます。従って、個々の国民や民族固有の道徳規範を超えた倫理学が必要になります。そうして、その第一歩は、そういったものがあるはずという共通認識を持つことだとの主張です。
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