ラッセル英単語・熟語1500 |
しかし、不信心であることを公言する全体主義者達による行過ぎた行為に衝撃を受けてきた現代世界においては、ヴィクトリア朝時代の不可知論者達の徳行は疑う余地がないとは余り思われず、それはキリスト教的伝統からの離脱が不完全であったせいとさえ思われるかも知れない。従って、倫理学が、 社会的に満足できる形で、神学を離れて独り立ちできるかどうかという問題全体は、倫理学が神学から独立することから生ずる悪の深刻な可能性について、我々の祖父達における以上に注意を払いつつ、再検討されなければならない。祖父達は、合理的な進歩を心地よく信じることによって、落ちつきを保っていたのである。
But in the modern world, which has been shocked by the excesses of totalitarians who professed themselves unbelievers, the virtues of Victorian agnostics seem less conclusive, and may even be attributed to imperfect emancipation from the Christian tradition. The whole question whether ethics, in any socially adequate form, can be independent of theology, must therefore be re-examined, with more awareness of the deep possibilities of evil than was to be found among our grandfathers, who were kept cozy by their comfortable belief in rational progress.
Source: Bertrand Russell: Human Society in Ethics and Politics, (1954), chapter 1
More info.:https://russell-j.com/cool/47T-0104.htm
<寸言>
長いので前半部分を省略しました。前半部分があったほうが引用文の理解がしやすいので、以下、あげておきます。
「宗教がなくては人々(人間)は邪悪になるであろうというのは、常に、正統派(の人々)のお気に入りの議論(論拠)の一つであった。ベンサム(1748-1832)からヘンリ・シジウィック(1835-1900:イギリスの哲学者、倫理学者)にいたる、19世紀のイギリスの自由思想家達は、この論法を痛烈に否定し、そうして、彼らはそれまでに存在したなかで最も道徳的な人々であったことから、彼らの否定は力を獲得した(のである)。(It has always been one of the favourite arguments of the orthodox that without religion men would become wicked. The nineteenth-century British freethinkers, from Bentham to Henry Sidgwick, vehemently repudiated this argument, and their repudiation gained force from the fact that they were among the most virtuous men that have ever existed.)」
なお、玉川大学から出された勝部真長(訳)では、「shocked by the excesses of totalitarians」は「全体主義者があまりに多すぎるのに衝撃を受けて・・・」と訳出されていますが、「excesses」と複数形になっており、「全体主義者達による過剰な行為によって衝撃を受け」が適切な訳であると思われます。
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