ラッセル英単語・熟語1500 |
実際面における(実際問題としての)合理性とは、その瞬間に最も強いと思われる欲求だけでなく、関連する全ての欲求を念頭において行動する習慣と定義することができる。意見における合理性と同様、それは程度問題である。完全な合理性は間違いなく達成不可能な理想であるが、ある人間を精神障害者(精神異常者)と分類し続ける限り、ある人間を他の人間よりも合理的だと考えていることは明らかである。世の中の確かな進歩は、実際面においても、理論面においても、合理性を高めることにあると、私は信じている。
Rationality in practice may be defined as the habit of remem bering all our relevant desires, and not only the one which happens at the moment to be strongest. Like rationality in opinion, it is a matter of degree. Complete rationality is no doubt an unattainable ideal, but so long as we continue to classify some men as lunatics it is clear that we think some men more rational than others. I believe that all solid progress in the world consists of an increase in rationality, both practical and theoretical.
Source: Sceptical Essays, 1928, chapter 4: Can me be rational?
More info.: https://russell-j.com/cool/SE_1928.pdf
<寸言>
日頃「自分の気持に正直でありたい」と強く思っている人、それとともに「他人の気持ちも同様に大事に」したいと思っている人、できるだけ「感情に流されないように合理的に考えよう」と思う人など、人様々(三者三様)です。
漱石の『草枕』の冒頭の言葉のように「(山路を登りながら、こう考えた。)智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい」というのが現実です。そうであっても、ラッセルは、「世の中の確かな進歩は、実際面においても、理論面においても、合理性を高めることにある」と信じていました。しかし、だからと言って、よく誤解されましたが、ラッセルは「理性の奴隷」ではありませんでした。生涯における恋愛の多彩さをみるだけでもわかります。
#バートランド・ラッセル #Bertrand_Russell