ラッセル英単語・熟語1500 |
「臨機応変の才(気転を働かせること)」が一つの美徳であることは,否定できない。全く思いがけず,場所にそぐわない発言を次々とする人間は,仲間達全員から嫌われるだろう。しかし「臨機応変の才」は美徳であるが,ある種の悪徳ときわめて密接に繋がっている。即ち,臨機応変の才と偽善の境界はきわめて狭い。両者の違いはその動機にある,と思われる。即ち,(相手を)喜ばせようとする「親切心」からくるものである場合は,「臨機応変の才」は正しいものであるが,それが相手の感情を損なう不安,あるいはおべっかにより何らかの利益を得ようとする気持ちにもとづくものであれば,「臨機応変の才」は,あまり好感がもてないものになりやすい。他人との困難な交渉に慣れている人間は,相手の虚栄心に対する,また相手のいろいろな偏見に対する'思いやり'を身に着けるが,誠実さを第一と考える者にとってはそれは非常にぞっとするものである。
It cannot be denied that tact is a virtue. The sort of person who always manages to blurt out the tactless thing, apparently by accident, is a person full of dislike of his or her fellow creatures. But although tact is a virtue, it is very closely allied to certain vices; the line between tact and hypocrisy is a very narrow one. I think the distinction comes in the motive: when it is kindliness that makes us wish to please, our tact is the right sort; when it is fear of offending, or desire to obtain some advantage by flattery, our tact is apt to be of a less amiable kind. Men accustomed to difficult negotiations learn a kind of tenderness towards the vanity of others and indeed towards all their prejudices, which is infinitely shocking to those who make a cult of sincerity.
Source: Mortals and Others, v.1, 1975
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<寸言>
臨機応変の才(機転を働かせる才能)があり、評価され、ポストがかなりあがると、機転を働かせることは疲れるので、そういった気苦労はしだいにしなくなります。そうして、偉くなって機転を働かせてもらう対象になると、臨機応変の才を発揮する部下を見る目は、「よし、よし、よく気がつくな」と感じるか、それとも「このおべっか使いが!」と想うか、人によって様々です。
長い間、ラッセルが言う「良い機転」を働かせてきた人は前者になり、「悪い機転(おべっか)」を働かせてきた人は後者になりそうです。 細田衆議院議長は失言問題やセクハラ問題で現在「まな板の鯉」状態になっています。(自他共に認める)大変優秀な細田氏は若い時「臨機応変の才」があったかどうかわかりませんが、現在はそんな才能はまったくないように見えます。セクハラ問題では「証拠がありすぎる」ように思われますので、「文春」(週刊誌)を虚偽で訴えても勝訴しそうもありません。参院選前に、(細田派を受け継いだ安倍元総理にならって)「病気」を理由に衆議院議長を「勇退」することになるでしょうか?
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