ラッセル英単語・熟語1500 |
「言葉の基本的な使用は指示的使用(指示文)と命令的使用(命令文)と疑問的使用(疑問文)とに分けることができる、と私は考える。 子供は母親の来るのを見れば、『ママ!』と言う時があるが、これは指示的使用である。母親が必要なとき子供は『ママ!(来て!)』と呼ぶであろう。これが命令的使用である。母親が魔女の衣装をまとい、 子供がその変装を見抜きはじめる時、子供はは『ママ?』と言うかも知れない。これは疑問的使用である。言語の習得において最初にこなければいけないのは、語の指示的使用である。なぜなら語とそれによって意味される対象との連合は、両者が同時に存在(共在)することによってのみ創り出されるからである。しかし命令的使用がすぐそれに続く。これは、ある対象について考えるとはどういうことかを考察する場合に関連している(重要である)。母親を呼ぶことができるようになったばかりの子供は、以前に彼(彼女)が度々置かれた一つの状態に対する言語的表現を発見したのであり、その状態は以前に母親と結びつけられていたが今やまた 『母』という語とも結合するにいたったということは、明らかである。
I think the elementary uses of a word may be distinguished as indicative, imperative, and interrogative. When a child sees his mother coming, he may say "mother"; this is the indicative use. When he wants her, he calls "mother!"; this is the imperative use. When she dresses up as a witch and he begins to pierce the disguise, he may say "mother?"; this is the interrogative use. The indicative use must come first in the acquisition of language, since the association of word and object signified can only be created by the simultaneous presence of both. But the imperative use very quickly follows. This is relevant in considering what we mean by "thinking of" an object. It is obvious that the child who has just learnt to call his mother has found verbal expression for a state in which he had often been previously, that the state was associated with his mother, and that it has now become associated with the word "mother".
Source: My Philosophical Development, 1959, by Bertrand Russell
More info.: https://russell-j.com/beginner/BR_MPD_13-030.HTM
<寸言>
常識的なことを言っているだけですが、赤ん坊が言葉を習得する過程(言葉の指示的使用 → 命令的使用 → 疑問的使用)を適切に表現しており、示唆的です。
私も、長女が幼い時、ある場面で「テ、ジャマ」(=パパの手は邪魔である。私の体から手を離しなさい!」と言うのを聞き、「ああ、単語をつなげるだけで内容や気持ちや欲求を簡潔に伝えることができるんだ」と感心したことをはっきりと記憶しています。
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