ラッセル英単語・熟語1500 |
我々は自殺の問題をその得失/当否よりも,人命の尊さに関連づけて考える傾向がある。しかし,この人命尊重という言葉を真面目にとるのはルール違反だと思い至る(気づく)。なぜなら人命の尊重を真剣に考える人は,戦争を非難しなければならないことになるからである。今の世の中で戦争が我々の制度の一部分になっている限り,惨めな人生を送り自殺までも企てなければならない不幸な人達に対して人命尊重を引き合いに出すことは,全くの偽善である。
The subject of suicide is apt to be considered not on its merits but in relation to what is called the sacredness of human life. I find, however, that it is illegal to take this phrase seriously, since those who do so are compelled to condemn war. So long as war remains part of our institutions it is mere hypocrisy to invoke the sacredness of human life against those unfortunates whose misery leads them to attempts suicide.
Source: Mortals and Others, v.1, 1975
More info.: https://russell-j.com/ILLEGAL.HTM
<寸言>
ラッセルがこのエッセイを書いた1932年においては、英米においては自殺に対して厳しい目が注がれている(自殺は違法)と書いています。しかし、添付画像(’の記述=WHOによる2012年調査)を見ると、英米よりも日本のほうが自殺許容度が低くかつ自殺率が高くなっています。欧米人の意識が激変したのでしょうか? 今戦争をしているロシアやベラルーシは自殺率が日本よりも高い上に自殺許容度が低いのは注目されます。
「人名尊重が第一」と為政者が考えているなら、他国の領土まで自国の軍隊を派遣すべきではなく、徴兵制などもあってはならないと考えそうです。しかし、実際は、少なからぬ政治家や権力者は、国民の命を守ることよりも、国を守る(領土を守る、現体制を守る)ことのほうが重要と考えているようです。尖閣を死守すると言っている人は、自衛隊員(国民)の命よりも「人の住んでない」尖閣を守ることのほうが重要と考えているようです。
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