ラッセル英単語・熟語1500 |
「典型的なイギリス人とは、イギリス人の大多数の持つ全ての特性を持つ人(英国人)である。」 容易にわかることだが、大多数のイギリス人は、大多数のイギリス人が持つところの諸特性のすべてを持つつとは言えない。それゆえ、上の定義通りに考えると、典型的なイギリス人というのはかえって非典型的であることになる。その(困難な)問題は、「典型的(typical)」という語が、(まず)全ての特性への言及によって定義され、そうして、それ自身一つの特性としてとり扱われているということから生じている。それゆえ、「全ての特性」について正当に語りうるためには、実際に「全ての特性」を意味すべきではなく、「諸特性の全体への関係に言及しない特性の全て」をのみを意味すべきである、
'A typical Englishman is one who possesses all the properties possessed by a majority of Englishmen'. You will easily realize that most Englishmen do not possess all the properties that most Englishmen possess, and therefore a typical Englishman, according to your own definition, would be untypical. The trouble has arisen through the fact that the word 'typical' has been defined by a reference to all properties and has then been treated as itself a property. It seemed therefore that, if it is to be legitimate to speak of 'all properties', you must not really mean 'all properties', but only 'all properties that do not refer to a totality of properties'.
Source: My Philosophical Development, 1959, by Bertrand Russell
More info.: https://russell-j.com/beginner/BR_MPD_10-170.HTM
<寸言>
ラッセルは「ラッセルのパラドクス」を回避するためにタイプ理論(型の理論)を発見しました(考え出しました)。集合の部分に関する陳述と集合の全体に関する陳述ははっきり区別をしないとパラドクス(論理的矛盾)に陥ってしまいます(自己言及はしないようにとの忠告です)。
一番単純な例は、「(紙の表には)この紙の裏に書かれていていることは間違っている」と書かれており、「(紙の裏には)表に書かれていることは正しい」と書かれている例です。つまり、「この紙の裏に書かれていることは間違っている」というのが正しいとすると、(裏に書いてある)「「表に書かれていることは正しい」というのは間違っている」つまり「表にかいてあることは間違っている」ということになり、表に書かれている「この裏に書かれていることは間違っている」は間違っている(この紙の裏に書かれていていることは正しい)ことになり、(表の)「この紙の裏に書かれていていることは間違っている」は正しいことになり、・・・というように堂々巡りになり、何が何だかわからなくなってしまいます。
笑い話で、「絶対になんて絶対に言うな」と言う人に対し、「あなたは絶対に言うなと言いながら絶対にと言ってるじゃないか」というのがあります。天に唾するなんとやら、です。
#バートランド・ラッセル #Bertrand_Russell