バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Ru
ssell Quotes )

ラッセル英単語・熟語1500

 非常に重要なもう一つの点(point 要点/主張)がある。それはウィトゲンシュタインが、世界(world 宇宙)の全てのものについて(の)いかなる陳述も認めようとしないことである。・・・・・・。1919年に(オランダの)ハーグにおいて、私が彼と『論考』について議論していた時、私は眼の前に一枚の白紙を置いてそれにインクのしみを3つつけた。(そうして)次のことを認めてほしいと彼に懇願した。即ち、ここに3つの斑点があるのだから世界には少なくとも3つのものがあるということを認めてほしいと。しかし、彼は断固として拒絶した。彼は紙の上に3つの斑点があることは認めた。それは有限な主張(だからである。しかし彼は、世界全体(宇宙全体)についていかなることも語ることはできるとは認めようとしなかった。このことは彼の神秘主義と結びついているが、彼が同一性を認めることを拒絶することに根拠づけられている。

There is another point of very considerable importance, and that is that Wittgenstein will not permit any statement about all the things in the world. ... When I was discussing the Tractatus with him at The Hague in 1919, I had before me a sheet of white paper and I made on it three blobs of ink. I besought him to admit that, since there were these three blobs, there must be at least three things in the world ; but he refused, resolutely. He would admit that there were three blobs on the page, because that was a finite assertion, but he would not admit that anything at all could be said about the world as a whole. This was connected with his mysticism, but was justified by his refusal to admit identity.
Source: My Philosophical Development, 1959, by Bertrand Russell
 More info.: https://russell-j.com/beginner/BR_MPD_10-110.HTM

<寸言>
 「語りえないことについては人は沈黙せねばならない」という一文は、ウィトゲンシュタインについて多少とも知っている人ならみんな聞いたことのある言葉(ご託宣)です。
 「同一性」についてはわかりにくいと思われますので、引用文の少し前にある記述を以下転載しておきます。

【「大雑把に言えば、2つのものについて、それらは同一であると言うことは無意味であり、一つの物について、それがそれ自身と同一であると言うことは、何も言わないことである」(ウィトゲンシュタイン『論考』5.5302 および 5.5303)。

 一時、私はこの批評を受けいれたが、間もなくこの批評は数学的論理学(記号論理学)を不可能にするものであり、かつ、事実、ウィトゲンシュタインの批評は正しくないという結論に達した。このことは、数えるということ(counting)を考察すれば特に明らかになる。もし a と b とがその全ての特性を共有しているならば、a のことを言うとき同時に b のことも言わざるをえないのであり、あるいは言い換えれば、 a を数えるとき同時に b も数えざるをえないのであり、それは a を数えることと b を数えることとは別のことでなく、同一の数える行為である。だから、a と b とが二つのものであることを恐らく決して発見しえないであろう。
 ウィトゲンシュタインの立場は、異他性(diversity 多様性)を定義不可能な関係であることを仮定している。ただし、彼自身この仮定をしていることに気づいていたとは私は思わない。しかしもし彼がこの仮定をしていないとしたら、いかなる根拠によって彼が「二つの対象がその全ての特性を共通に持つ」という命題を(彼が言うように)有意味と主張できるのか理解できない(しかも彼は実際そうだと主張しているのである)。けれども、もし異他性を認めると、其の場合には、a と b とが二つのものであるとすると、a は b が持っていない特性をもっている、即ち、「 b とは異なっている」(being diverse from b)という特性をもつ(ことになる)(訳注:従って、a と b とは全ての性質を共通に持っているわけではないことになる)。従って、同一性についてのウィトゲンシュタインの議論は誤まっている、と私は考える。そしてもしそうなら、彼の体系の大きな部分が正しくないことになる(invalidate 無効化する)。】

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