バートランド・ラッセルの名言・警句( Bertrand Ru
ssell Quotes )

ラッセル英単語・熟語1500

 希望も恐怖も全て自分自身に集中している人はとても沈着冷静に死(というもの)をながめることはできない。なぜなら、死はその人の情緒的な世界を全て消滅させてしまうからである。ここでもまた、私達は抑圧(抑制)という安っぽく安易な方法をしきりに勧める伝統と出会う。(即ち)聖者は「自我」を捨てることを学ばなければならない、肉欲を抑えなければならない、また、本能的な喜びをあきらめなければならない。これは実行可能である。しかしその結果はよくない。禁欲主義の聖者は、自分自身の快楽を放棄(否定)した後で、他人の快楽も否定する。他人の快楽の否定は自分の快楽の否定よりももっと容易である。

The man whose hopes and fears are all centred upon himself can hardly view death with equanimity, since it extinguishes his whole emotional universe. Here, again, we are met by a tradition urging the cheap and easy way of repression: the saint must learn to renounce Self, must mortify the flesh and forgo instinctive joys. This can be done, but its consequences are bad. Having renounced pleasure for himself, the ascetic saint renounces it for others also, which is easier.
Source: On Education, especially in early childhood, 1926
 More info.: https://russell-j.com/beginner/OE02-150.HTM

<寸言>
 岩波文庫版(ラッセル『教育論』)の安藤貞雄訳では、「そういう態度は、その人の情緒的な世界をすっかり滅ぼしてしまうからだ。」と訳出しています。しかし、'it' (単数形!)は「そういう態度」ではなく、「死(というもの)」を指している解釈するのが文法上、自然だと思われます。「そういう態度」がその人の情緒的世界を distingushes(消滅させる) (自分が一番大事だと思う自分の情緒的世界をなくしてしまう=それは耐えられない)というのであれば、主語を it ではなく、たとえば「そういった態度」といった表現の英語にしたはずです。構文(文法)から言えば、it は前文の、'the man' か  'death' のいずれかを受けている(指す)はずであり、'death' を指していると考えるのが素直ではないでしょうか?
 安藤先生は英語学の大家で、この『教育論』も名訳です。しかし、10箇所くらい意見が異なるところがあり、ラッセルのポータルサイトに掲載している全訳のなかで指摘させていただいています。誰かに聞かれたのだと思われますが、安藤先制からメールで問い合わせがあり、7,8箇所、お知らせしたことがありました。「改訳すべきところがあれば増刷の時に行いたい」ということでしたが、しばらくしたら亡くなられました(ウィキペディアによれば、2017年3月没)。チュックしていませんので、改訳されているところがあるかどうかはわかりません。

The man whose hopes and fears are all centred upon himself can hardly view death with equanimity, since it extinguishes his whole emotional universe.

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