ラッセル英単語・熟語1500 |
地獄信仰がより不確かなものになるにつれて,極楽信仰も同様に生き生きとしたイメージを失ったことは,興味深い事実である。天国は今日でもキリスト教正統信仰によって公認されているものの一部であるが,現代の議論において,天国に関しては,進化における神の目的の証拠に関してよりも,語られることはずっと少ない。宗教を擁護するための論拠は,今日では,あの世での生活との関連でよりも,この地上での善い生活を促進することにおいて宗教が与えている影響について,詳細に述べられている。以前,道徳や行為に影響を与えていたこの世の生活はあの世の生活の単なる準備にすぎないという信仰は,今日では,その信仰を意識的に拒否していない人々に対してさえ,余り影響を与えなくなっている。
It is a curious fact that, as the belief in hell has grown less definite, belief in heaven has also lost vividness. Although heaven is still a recognized part of Christian orthodoxy, much less is said about it in modern discussions than about evidences of Divine purpose in evolution. Arguments in favour of religion now dwell more upon its influence in promoting a good life here on earth than on its connection with the life hereafter. The belief that this life is merely a preparation for another, which formerly influenced morals and conduct, has now ceased to have much influence even on those who have not consciously rejected it.
Source: Religion and Science, 1935, by Bertrand Russell
More info.: https://russell-j.com/beginner/RS1935_05-010.HTM
<寸言>
地獄と極楽はセット販売となっていました、といったところでしょうか。地獄があるからこそ天国があり、天国があるからこそ地獄があるというのが宗教の重要な教義でした(また、地獄と天国との間には煉獄がありました)が、多様性を重視している国家においては、本心から神や天国や地獄を信じている人はずっと減りました。
もちろん、宗教においては、あの世は存在しない(魂などというものはない)などといったら宗教でなくなってしまいますので、「公式には」あの世も、魂も、お説教のなかには生き続けています。南無阿弥陀仏。
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