ラッセル英単語・熟語1500 |
人間の果てしない欲求(欲望)のなかで,最も主要なものは,権力と光栄に対する欲求である。このふたつは,密接な関係があるが,決して同一のものではない。総理大臣は,光栄よりも権力のほうをより多く持っているが,王は,権力よりも光栄のほうをより多く持っている。けれども,一般的に言って,光栄(栄誉)を得る最短の近道は権力を得ることである。このことは,特に公的な出来事との関係で活動している人(公権力を行使する人々)の場合,特にそうである。それゆえ,光栄(栄光)に対する欲求は,大体において,権力欲によって促進される活動と同じ種類のものであり,こうした二つの動機は,大部分の実際上の目的に対しては,一つのものと見なされる。
Of the infinite desires of man, the chief are the desires for power and glory. These are not identical, though closely allied : the Prime Minister has more power than glory, the King has more glory than power. As a rule, however, the easiest way to obtain glory is to obtain power; this is especially the case as regards the men who are active in relation to public events.The desire for glory, therefore, prompts, in the main, the same actions as are prompted by the desire for power, and the two motives may, for most practical purposes, be regarded as one.
Source: Bertrand Russell : Power, a new social analysis, 1938
More info.: https://russell-j.com/beginner/POWER01_040.HTM
<寸言>
70歳になって叙勲されることを待望する人々。余生は、誇りに(埃?)に満ちて、悠々自適の生活を送りたいと望む。そうして時に触れ、様々な出来事について意見を求められ、大所高所から所信を述べる。そんな生活をしている方々は、さぞかし充実した老後を過ごされていることと思います。
日本では歳を取るにつれて、性格が穏やかになり、丸みを帯び、人畜無害な人間になることが期待されます。ラッセルの場合はその反対でした。公的には、年をとるにつれて、ますます過激になり、反核平和運動に多くの時間を費やしました。しかし、私的には、エディス夫人との平和な生活も大事にしました。
ラッセルは、英国最高の栄誉であるメリット勲章を1950年に受けた時のことを自伝で次のように語っています。
「メリット勲章(メリット勲位授与)で始まり,ノーベル賞(受賞)で終わった1950年という年は私の社会的地位が最高点を記録した年(社会的に最も尊敬された年)であったように思われる。このことが,一般社会の考え方や慣行に盲目的に従うようになる始まり(正統主義の始まり)を意味することになるのではないかという恐れから,少し不安を感じはじめたことは事実である。私は,常に,曲がったことをしないで社会的に尊敬される人間になることはできないという考えを抱いてきた。しかし,私の道徳感があまりにも鈍感なために,自分がどのような過ちを犯したのかわからなかった(松下注:いうまでもなくこれは英国人特有のユーモア)。」
1950, beginning with the OM and ending with the Nobel Prize, seems to have marked the apogee of my respectability. It is true that I began to feel slightly uneasy, fearing that this might mean the onset of blind orthodoxy. I have always held that no one can be respectable without being wicked, but so blunted was my moral sense that I could not see in what way I had sinned.
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