ラッセル英単語・熟語1500 |
ラザフォード(Ernest Rutherford, 1871-1937.10.19: 英国物理学者。1908年ノーベル「化学」賞受賞)が初めて原子構造を発見した時以降,遅かれ早かれ原子力が戦争に用いられるようになるだろうことは明らかとなっていた。このことは,人類が自らの愚かさによって絶滅する可能性のあることを私に予見させた。・・・。
私は当時,あまりにも現実離れしているように思われたので,この小説を出版しなかった。しかし,原爆の登場とともに現実離れの感じは消滅した。そこで私はこれと同じ教訓(寓意)をもり込んだ別の小説を何篇か書いた。そのうちのあるものは原爆による破滅で終わる筋書にし,「(著名人の)悪夢」と名づけた他の小説は著名人の心の中に隠された恐怖を例示した。
From the time when Rutherford first discovered the structure of the atom, it had been obvious that sooner or later atomic force would become available in war. This had caused me to foresee the possibility of the complete destruction of man through his own folly. ...
I did not publish this story at the time as it seemed too remote from reality. But, with the coming of the atom bomb, its remoteness from reality vanished, so I wrote other stories with a similar moral, some of which ended in atomic destruction, while others, which I called 'nightmares', exemplified the hidden fears of eminent man.
Source: The Autobiography of Bertrand Russell, v.3
More info.: https://russell-j.com/beginner/AB31-270.HTM
<寸言>
1945年8月の広島・長崎への原爆投下を受けて、ラッセルは英国上院(貴族院)で将来原爆よりもはるかに破壊力が大きい水爆(核融合方式)が開発されるだろうと警告しました。実際、ラッセルの予想よりも早く水素爆弾は開発されました。
ヒトラーのドイツが先に核兵器を開発したら大変なことになると言うことで、アメリカがまず(マッハタン計画によって)原爆を開発しました。しかし、ソ連がすぐに後追いしました。それ以後は、フランス、中国、イスラエルなど、どんどん保有国が増え、現在では、わかっているだけで9カ国に達しています。
長い間、東西における核兵器の保有バランスによって平和が保たれるという考え方(均衡理論)が優勢でした。しかし、中国が最近急速に核兵器の保有数を増やしており、アメリカなどは(自国での大量保有は棚に上げて)中国の核兵器の増強を非難しています。
しかも、米ソでは、現在の核兵器は破壊力が強くて実質的に使用できないということで、小型の核兵器の開発に乗り出しました。「使える」核兵器をもたないと宝の持ち腐れになるという主張ですが、小型になればテロリストによって奪われる危険性がましていきます。そうして、テロリストが小型核兵器を最初に使用することになるかも知れません。バズーカ砲で発射できる小型核兵器で原子力発電所が破壊されたらどうなるでしょうか? 狭い国土の日本などは、原発施設が(バズーカ砲で発射できる)小型核ミサイルで破壊されたらどういうことになるでしょうか? ラッセルの心配が現実化する可能性はゼロではありません。
https://russell-j.com/cool/SP194511.HTM
#バートランド・ラッセル #Bertrand_Russell